【人事学望見】第1271回 年休権成立と全労働日 労基法上の権利を不就労扱いに
2021.01.07
【労働新聞】
年休取得に対する不利益取扱いは、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年休取得に対する事実上の抑止力の強弱などを考慮して、年休権の行使を抑制し、労基法が労働者に年休を保障した趣旨を実質的に失わせる場合には違法となる。
公序反する取得抑止効果
経営状況が良好でないことの一因に従業員の稼働状況があるとしてトラブルになったことについては、すでにいくつかの判例を紹介した。その稼働率の算定に当たって、会社が多様な項目を挙げてきた代表的な判例に日本シエーリング事件(最一小判平元・12・14)がある。
事件のあらまし
Y社は、賃上げ回答に当たって、稼働率向上を条件とすることを労組に表明し、その基準として「80%」を提示した。算定の基礎となる不就労には「年休」が含まれており、その取扱いの違法性が問題となった。
そのほかには、欠勤、遅刻、早退、生理休暇、慶弔休暇、産前産後休業、育児時間、労災による休業、さらにストなど組合活動も含まれている。
Aら原告労働者は数年間にわたる各年の賃上げに際し、それぞれ前年の稼働率が80%以下であるとして賃上げ対象者から除外され、各年の賃上げ相当額およびそれに対応する夏季冬季一時金、退職金が支給されなかったため、Y社に対し相当額と損害賠償を求めて提訴した。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
この連載を見る:
令和3年1月11日第3288号12面 掲載