【元漫才師の芸能界交友録】第45回 岡口基一② 法案解説は政治活動か

2020.06.11 【労働新聞】
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筆者とはプロレス観戦仲間
イラスト・むつきつとむ

 裁判所は、一部の刑事事件において被害者の申し出があるとき、その氏名を公開法廷で秘匿する決定ができる。ところで、何ら申し出をしていないのに、番組内容について報じるNHKニュースで番組名を秘匿された〈KBS京都のラジオ〉がある。その“悲しきRADIO”の名は、『角田龍平の蛤御門のヘン』という。

 2020年5月15日に配信されたNHKニュースから引用する。〈仙台高等裁判所の岡口基一裁判官は13日、KBS京都のラジオ番組に電話で出演し、検察庁法改正案について、およそ45分間にわたって自身の見解を述べました。この中で岡口基一裁判官は経緯を解説したうえで「検察官が内閣の顔色をうかがいながら仕事をするようになると危惧される。法解釈の変更を口頭の決裁で済ませるなど、まともな法治国家とは言えない」などと批判しました。中立性を求められている現職の裁判官がメディアに出演し、政府を批判するのは極めて異例です。岡口裁判官はNHKの取材に対し「法案が大変複雑なため、内容を正確に理解したうえで議論してもらいたかった。裁判官が積極的に政治運動に参加することは許されていないが、法案の問題点を説明することは禁じられていない」と話しています〉。

 裁判所法52条1号は、裁判官が「積極的に政治運動をすること」を禁止している。最高裁判所は、裁判官の政治運動が争点になった寺西判事補事件で、「積極的に政治運動をすること」を「組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるもの」と定義した。その上で、「具体的行為の該当性を判断するに当たっては、その行為の内容、その行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、その行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当」だとした。

 『蛤御門のヘン』は、過剰な当事者意識を持った民衆が、スキャンダルを起こした著名人を引き摺り下ろしては溜飲を下げる現代社会において、罪と罰の均衡を失する批判に晒されたスケープゴートを弁護するコーナー「勝手に弁護団」などがあるリーガルバラエティだ。また、性的醜聞が報じられた議員は与党の逢沢一郎氏だけでなく野党の高井崇志氏も万遍なく茶化し、不偏不党を貫いている。当該番組に、複雑な法案の内容をリスナーに理解してもらうために出演し、法案の問題点を説明したところで、「積極的に政治運動をすること」の定義に該当しないのは明白だ。

 たしかに、NHKのいうとおり裁判官には中立性が要請される。しかし、問題の多い法案について職務外では自らの見解を秘匿することが裁判官の中立性を確保するのだろうか。番組出演の最後に岡口さんは、大家から苦情をいわれる若者の心情を「大家の言うことはわかる だけど僕の言うことは正しい」と歌ったRCサクセションの『恐るべきジェネレーションの違い(Oh,Ya!)』をリクエストした。その選曲はまるでNHKニュースを予見したアンサーソングのようだった。

筆者:角田龍平の法律事務所 弁護士 角田 龍平

この連載を見る:
令和2年6月15日第3261号7面 掲載

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