【元漫才師の芸能界交友録】第20回 杉作J太郎② 出版記念イベントで共演/角田 龍平

2019.11.28 【労働新聞】
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東映トークに花を咲かせた
イラスト・むつきつとむ

 「お父さんのことは知ってますよ!」。「え!? パパちゃんのこと知ってるんですか?」。

 2010年秋。大阪の道頓堀で行われたトークイベントの打ち上げの席で、杉作さんは『仁義なき戦い』にやたら詳しい私の妻を訝しんだ。20代と思しき女性が、「子供のおもちゃを選んでいた松方弘樹さんが射殺された場面は、大映通り商店街の八百屋をおもちゃ屋にして撮影した」とかいうのだから無理もない。しばらくして、妻の父が『仁義なき戦い』シリーズの助監督を務めた土橋亨だと分かると、パパちゃんを取材したことがある杉作さんは膝を打った。「家族以外の人とこんな話をするのは初めてです」と嬉しそうに妻がいう。たしかに、女子会やママ友の間で東映ヤクザ映画が取り沙汰されることは滅多にない。

 「マキちゃんにもお世話になりました」。東映映画のみならずプロレスとモーニング娘。にも造詣が深い杉作さんは、妻のいう「マキちゃん」をビューティー・ペアのマキ上田さんか、後藤真希さんだと思ったらしい。予想に反して、「マキちゃん」とは「東映ピンキー・バイオレンス映画の最終兵器」牧口雄二監督のことだった。マキちゃんはパパちゃんが東映の独身寮に住んでいた頃から馬が合う先輩で、妻のことを娘のように可愛がっていた。

 「それじゃあ、牧口監督の映画はみてるんですか?」。杉作さんの意地悪な質問に妻は恥ずかしそうに答えた。「いいえ、パパちゃんから『マキちゃんの映画はみてはいけない』と厳命されていて。でも気になってネットで検索してみたら、『牛裂き』という言葉が出てきました…」。『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』はマキちゃんの代表作のひとつである。

 16年4月29日。大阪の宗右衛門町にあるライブハウスの舞台上では、マキちゃんが『牛裂きの刑』の制作秘話を語っていた。変質的な奉行を演じた汐路章さんが精力剤代わりにイモリを飲み込むシーンで、いかにして汐路さんをおだてて本物のイモリを3匹飲み込ませたか。マキちゃんの回想に、ゴールデンウイークというのに行楽に出かけずイベントに詰めかけた好事家たちがどっと沸いた。

 その夜、杉作さんの『ボンクラ映画魂完全版 燃える男優列伝』の出版を記念して行われたイベント『東映京都の男たち』に、私はパパちゃんマキちゃんと一緒に登壇していた。客席では、独身時代に東映京都で記録係をしていたママちゃんが、妻と並んで楽しそうに見守っている。

 マキちゃんに負けじとパパちゃんもエピソードを披露した。映画の中で八名信夫さんに裏切られた若山富三郎さんが、役柄に没入するあまり本気で八名さんを殴ったところ、八名さんが鶴田浩二さんに泣きついたものだから、若山さんと鶴田さんがそれぞれ本職を連れてきて撮影所内での抗争が勃発寸前になったという。

 普段は顧問先に法令遵守を口うるさくいっているが、この日ばかりはコンプライアンスという言葉がなかった時代の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・太秦」に思いを馳せた。

筆者:角田龍平の法律事務所 弁護士 角田 龍平

この連載を見る:
令和元年12月2日第3235号7面 掲載

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