【元漫才師の芸能界交友録】第37回 明石家さんま④ 恋人と別離して芸道邁進/角田 龍平

2020.04.09 【労働新聞】
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エンドロールで「共演」果たす
イラスト・むつきつとむ

 2015年秋。明石家さんま研究家エムカクさんのツイッターに一通のダイレクトメッセージが寄せられた。日本テレビのディレクターを名乗る男性から送られてきたそのDMには「さんまさんの還暦特番に力を貸してほしい」と書かれていた。

 エムカクさんがツイッターを始めたのは、2010年の夏だった。3年後、さんまさんへの熱情と敬意に溢れるツイートが水道橋博士さんの目に留まり、メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』で『明石家さんまヒストリー』の連載を開始する。

 20歳のある夜突然に“お笑い怪獣”の虜になってから、怪獣の足跡を追い続けているうちにいつの間にか不惑を迎えていた。エムカクさんが20年掛けて収集した膨大な音源や動画に遺されたさんまさんの言葉を手掛かりに編纂した『明石家さんまヒストリー』は、業界関係者の間で話題を呼んだ。DMを寄越したディレクターも、「“明石家さんま怪獣”が大阪にいる」という噂を聞きつけエムカクさんにアプローチしてきた。

 来阪したディレクターと喫茶店の個室で打合せをすることになったエムカクさんは、人見知りゆえ暫く黙って話を聞いていた。しかし、さんまさんの番組を数多く担当してきたというディレクターの発した何気ない一言が、エムカクさんを一気にスパークさせる。

 「映像素材を編集していると、さんまさんがVTRをみている顔に見入ってしまうんです」。ワイプと呼ばれるテレビの小窓に映るさんまさんの表情の変化をみるのがエムカクさんの密かな楽しみだった。ニッチな嗜好で意気投合したふたりは、時を忘れてさんまさんのことを語り合った。

 『誰も知らない明石家さんま 史上最大のさんま早押しトーク』は15年11月22日に放送された。番組では、若かりし頃のさんまさんの淡いラブストーリーを、『きみといた街角』というミニドラマで再現した。笑福亭松之助師匠の下で弟子修行をしていたさんまさんが、芸よりも愛を選び、恋人を幸せにするため、大阪を離れ東京の小岩で過ごした半年を描いた物語である。

 さんまさん役を菅田将暉さんが演じ、芥川賞作家の又吉直樹さんが脚本を担当した。又吉さんが脚本を書くうえで依拠したのが、エムカクさんの『明石家さんまヒストリー』だった。恋人との別離をきっかけに大阪へ戻り芸に邁進し、“お笑い怪獣”になるというエムカクさんの解釈がドラマでも採用された。

 自宅でオンエアをチェックしていたエムカクさんは、テレビの右上の小窓を食い入るようにみていた。ワイプに映っていたのは、再現ドラマをみながら、微笑んだり、挿入歌を口ずさんだり、野球選手の形態模写を忠実に再現する菅田さんに驚いたりするさんまさんだった。

 3時間の特番はエンディングを迎え、エムカクさんが提供したさんまさんの秘蔵写真を背景にスタッフの名前が次々とクレジットされていく。その中には、アカシヤン・ドリームを叶えた男の名前も刻まれていた。「リサーチ エムカク」。

筆者:角田龍平の法律事務所 弁護士 角田 龍平

この連載を見る:
令和2年4月20日第3253号7面 掲載

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