【特別対談】不明確な指導とパワハラの境界線 経営陣が意識改革を 研修用DVDの活用推奨
昨年6月、大企業にパワーハラスメントの防止措置義務が適用され、中小事業主には努力義務が設けられた。都道府県労働局へのパワハラ相談件数は全体の2割以上を占めるなど、注目度が非常に高まっている。パワハラ防止対策に向けて、織田信長をテーマにDVDを作成した鳥飼総合法律事務所代表弁護士の鳥飼重和さんと、監修に携わった元厚生労働省事務次官の戸苅利和さんに話をうかがった。
部下を放置は確執の原因につながる
――パワーハラスメントは近年非常に注目が高まり、相談件数も多くなっているようです。現状についてどうお考えでしょうか。
戸苅さん 実際に、都道府県労働局の相談コーナーに寄せられた2019年度の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は8万7570件に上り、全体の25.5%を占めています。セクシュアルハラスメントについての相談7323件と比べて、12倍もの数値です。
16年に厚労省が実施した職場のパワハラ実態調査では、予防と解消に取り組んでいる企業は全体の52.2%に留まりました。このようななかで、パワハラ防止対策を進めるべく、労働施策総合推進法改正で事業主に防止措置を義務付けた流れがあります。
鳥飼さん 今出された数字は、とても重要なものです。別の意味でも、この数字は変わっていくと考えています。1つは、SNSの影響です。ハラスメントを受けた労働者が会社に訴えたり官公庁へ相談に行く前に、SNSなどで自ら情報を集めて対策する事例が増えました。今は相談する前に情報が手に入る時代なので、相談件数のデータに直接反映されない問題もあるのではないでしょうか。…
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