【元漫才師の交友録】第63回 亀田和毅・姫月 西成版『北の国から』/角田 龍平

2020.10.29 【労働新聞】
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今秋、ラジオで共演した
イラスト・むつきつとむ

 「麻薬組織のドンの正体は…メキシコ前国防大臣だった」。Netflixで配信されている映画の話ではない。今月15日、メキシコのサルバドル・シエンフエゴス前国防相が、アメリカ麻薬取締局(DEA)に麻薬密売などの罪で身柄を拘束された。DEAが「エル・パドリーノ」(ゴッドファーザー)と呼ばれるメキシコの麻薬組織のドンの行方を追跡していたところ、麻薬犯罪対策を指揮していた前国防相が「エル・パドリーノ」だと判明したという。

 そんなメキシコへ、弱冠15歳で単身武者修行に旅立った男がいる。1991年に大阪市西成区で亀田家の三男として生まれた亀田和毅さんは、長男の興毅さん、次男の大毅さんと共に父史郎さんからボクシングの英才教育を受けて育った。史郎さんと二人三脚ならぬ四人五脚で世界チャンピオンをめざす亀田三兄弟のリアリティーショーがテレビを賑わすようになった20年前。職業選択の自由を奪われ、『キン肉マン』のラーメンマンを彷彿とさせる辮髪を結った幼い和毅さんをみて、将来を案じたのは私だけではなかったはずだ。

 私たちの不安は杞憂に終わった。20年後、KBS京都ラジオ『角田龍平の蛤御門のヘン』に妹の姫月さんを伴いゲスト出演してくれた和毅さんを、私は「WBO世界バンタム級王者、WBC世界スーパーバンタム級暫定王者に輝いた二階級制覇のチャンピオン」と紹介した。

 「可愛い子には旅をさせよ」という諺を拡大解釈した史郎さんに「軽量級の選手の多いメキシコへ行け」といわれ、中学卒業後に勇躍メキシコへ渡った和毅さんを待ち受けていたのは、異国の地でリングに上がる少年に容赦なく浴びせられるブーイングだった。亀田親子のリアリティーショーをみていないメキシコの観客にとって、和毅さんは無名の日本人ボクサーに過ぎなかった。しかし、自らの拳でブーイングを声援に変えた和毅さんは、メキシコで快進撃を続ける。やがて、世界王者になった和毅さんは、試合前のインタビューに流暢なスペイン語で答えていた。

 2018年1月、亀田家の末っ子である姫月さんはYouTubeに『亀田史郎チャンネル』を立ち上げた。女子プロボクサーの姫月さんは、日本ボクシングコミッションから資格取り消し処分を受けている史郎さんにセコンドをして欲しかった。史郎さんの世間のイメージを変えるために始めたYouTubeは、今では50万人近くの登録者数を誇る人気チャンネルになり、史郎さんは街行く子供に声を掛けられる存在になった。

 ラジオの収録で、亀田家を西成版『北の国から』と定義したが、年若い「西成の純と蛍」はピンと来ないようだった。確かに、西成には富良野のラベンダー畑のような美しい景色もなければ、田中邦衛さん演じる黒板五郎は史郎さんほど強面でもない。しかし、ふたりとも特殊な子育てしかできないけれど、子供に人生を捧げた父親なのだ。これからも亀田家の「エル・パドリーノ」史郎さんと子供たちのリアリティーショーから目が離せない。

筆者:角田龍平の法律事務所 弁護士 角田 龍平

この連載を見る:
令和2年11月2日第3279号7面 掲載

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