【人事学望見】第1307回 労災特別加入と労働者性 新顔でフード自転車配達が登場
労災保険の対象は原則として「労働者」なので、それ以外の者(中小事業主、自営業者、家族従事者など)は保護の対象とならない。しかし、働き方の実態からみて、名目上は事業主等であっても、労災保険による保護を必要とする就労形態も存在する。
指揮命令や専属性を考慮
そうした就労グループに対する救済措置として、労災保険には「特別加入」の仕組みが設けられている。
今年に入ってから、特別加入者の範囲拡大が続いている。代表例が、「原動機付自転車または自転車による貨物運送事業者」で、対象として想定されているのは、主としてフードデリバリーサービスの自転車配達員だ。
特別加入といえば、建設業の一人親方の例がよく知られている。そうした特殊な業種以外では、この仕組みに対する関心はそれほど高くないのが実情だ。
しかし、フードデリバリーサービスの恩恵を受けているオフィスも少なくないだろう。職場の話題として、この問題が取り上げられてもおかしくない。「元フリーターなどが働いているイメージがありましたが、実はあの人たちは個人事業業主だったんですね」。そんな半可通のコメントが飛び出さないとも限らない。
しかし、自転車配達員にも、2とおりが考えられる。第1は個人で経営する貨物運送業者というパターン、第2は会社に雇われた労働者というパターンだ。
このどちらに当たるかは、形式的な契約書の名称等だけからでは、判断できない。トラブルが発生した後、「グレー」な契約形態について、実質は請負・委託なのか、雇用契約なのか、裁判等で争った例も少なくない。いわゆる「労働者性」の問題だ。裁判例のなかでも、リーディングケースと目されているのが、横浜南労基署長事件(最一小判平8・11・28)だろう。
原告は、自己所有のトラックで貨物(X社の製品)輸送に従事していた運転手(A)だ。積込み作業中に傷害を負ったため、「労働者」として、労災保険の療養・休業補償給付の請求を行った。
しかし、労基署は「労働者ではない」として不支給決定したため、裁判を起こしたものだ。判決文では、…
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