【裁判例が語る安全衛生最新事情】第465回 神戸市事件 睡眠薬使用の認識あるが受診させず 神戸地裁令和6年5月16日判決
2025.05.27
【安全スタッフ】
事件の概要
被災者Aは、昭和55年生まれで、平成24年4月に被告Y市に採用された。平成31年4月1日、教育委員会事務局に配属となり、調整担当係長として、教育委員会会議、総合教育会議、スクールミーティング、防災などの業務を担当し、教育委員と教育委員会との連絡調整が業務の中心であった。
令和元年10月4日、市立小学校における職員間ハラスメント事案が報道され、教育委員会会議も通常月2回開催されていたのが、月4回になり、また総合教育会議も月1回開催され、亡Aの調整担当の業務も業務量は増大した。令和2年1月末には亡Aは体調が悪くなり、上司らも産業医への受診を勧めた。同2月2日、2月5日には上司にも眠れないので睡眠薬を飲んでいることを告げていた。しかしながら、2月7日、亡Aは、メモを残して自宅を出て、高架橋側道から飛び降り自殺した。
地方公務員災害補償基金神戸市支部長は、令和3年12月に本件精神疾患の公務起因性、自殺の公務起因性を認め、自殺したことにつき、公務上災害と認定した。
原告X1(妻)とX2、X3(子ども)は、被告Y市に対し、安全配慮義務違反があるので国家賠償法1条1項または民法415条に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。
判決の要旨
1、時間外労働時間など
亡Aの時間外勤務時間は、所定始業時間から時間外勤務の申請にかかる終業時刻までを基準にした場合には、…
執筆:弁護士 外井 浩志
この記事の全文は、安全スタッフの定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
この連載を見る:
2025年6月1日第2475号 掲載