【人事学望見】第1276回 内定取消有効例(新卒者) 自分の研修を妨害逮捕でアウト
採用内定中の労働契約は、解約理由が相対的に認められている点に着目して始期付解約権留保付労働契約と解されている。ただし、公務員について最高裁は内定通知書を受領した後の取消し事案について、内定通知は採用発令のための準備手続きに過ぎないとあっさり片付けた。
過激仲間と座り込み図る
東京都建設局採用内定取消事件(最一小判昭57・5・27)では、発令のための準備手続きに過ぎないので、正当な理由なく取り消されても、損害賠償の責任が発生するに留まる、としている。
事件のあらまし
東京都は都労連との協議のうえ、初任研修制度の改正を行ったが、一部組合員がこれにかみついた。そのいい分は、端からみるとはなはだノー天気。いわく、①研修制度が人事管理の手段として行われている②能率一点張りの悪い生産性第一主義を導入しようとしている③研修考課が必然的に勤務評定になる④思想統制である――と普通の都民がみると至極当たり前のものだが、反対組合員30人はヘルメットを着用して研修所入口に座り込んだ。
研修所当局は、書面とハンドスピーカーで退去要請を行ったが実力行使は収まる様子をみせないため、所長はこのままでは研修が不可能になると判断して、警察署に反対者らの排除を要請したものの約20人の退去に留まり、残りの者は玄関前でスクラムを組みアジ演説をしたり入構阻止の行動に及んだ。警察はリーダーを逮捕し拘留した。都知事は、原告Aが同調者と共に研修を妨害していたうえ、警察に逮捕もされたため、職員として採用するについては適格性に欠けると判断。Aの採用内定を取り消した。Aは行動に違法性はなく不当逮捕として内定取消しの無効を請求した。…
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