【元漫才師の交友録】第64回 Negicco・Nao☆ 憧れの父娘関係/角田 龍平

2020.11.05 【労働新聞】
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「Nao☆ちゃん!」「気持ち悪い!」の応酬は名物に
イラスト・むつきつとむ

 去年の秋、京都の老舗のライブハウス磔磔で、新潟のご当地アイドルNegiccoのライブをみた。西田ひかるさん以来、25年ぶりのアイドルのライブだった。すし詰めの会場で、背広姿の中年男性が鞄の中をまさぐっていた。おもむろに葱の形をしたライトを取り出すと、疲弊した男性の目に光が灯った。場内が暗転し、後方の階段からNao☆ちゃん、Meguちゃん、Kaedeちゃんが颯爽と現れる。葱の形をしたライトを振って呼応する男性の顔は多幸感に溢れていた。

 「今日は格好良いところをみてください」。開演前に楽屋へ京都銘菓の阿闍梨餅を差し入れすると、Nao☆ちゃんはニコニコ笑ってそういった。数十分後、ステージで躍動する三人をみて、アイドルに夢中になる人生を選んでいたら得られた逸失利益は計り知れないことに今更ながら気が付いた。

 ライブ中盤で披露した『カリプソ娘に花束を』は、花嫁に行く娘が「大キライだった」父へ感謝の気持ちを伝えるウェディングソングだ。2歳半の娘の「大スキ」から「大キライ」まで不合理な感情の変遷に翻弄されている私は、涙腺が葱を刻んだ時のように決壊するのを必死で堪えた。

 Nao☆ちゃんと初めて会ったのは、新潟総合テレビ『八千代ライブ』の放送が始まった2017年4月7日のことだった。日付まで明確に覚えているのは、前日に娘が生まれたからだ。娘の名前は葱子、もとい蕗子。娘が生まれる少し前、妻と行った料理屋でお品書きに書いていた「蕗の薹の天麩羅」の「蕗」の字を何だか美しく感じて、そう名付けた。

 『八千代ライブ』は、司会を務めるプロレスラーのスーパー・ササダンゴ・マシン選手の言葉を借りると「日常のよくある生放送の情報バラエティ番組の風景に、ちょっとありえない展開の演出を加えてみて、視聴者にささやかな非日常感を楽しんでもらおうという虚実の皮膜ギリギリ系エンタテインメント」だった。生放送中に突然ササダンゴ・マシンと殴り合ったり、Nao☆ちゃんと怒鳴り合ったり、私も虚実の皮膜を行ったり来たりしていた。しかし、コロナ禍で現実の非日常感に太刀打ちできなくなった『八千代ライブ』は、5月8日の放送をもって一旦休止を余儀なくされる。

 放送休止から3カ月後。KBS京都ラジオ『角田龍平の蛤御門のヘン』に電話出演したNao☆ちゃんが、今年はライブを開催できない京都の思い出を語ってくれた。お父さんと仲の良いNao☆ちゃんは、親子で大好きな映画『ガメラ3』に出てくるガメラとイリスが破壊した京都駅ビルをみるため、新潟から車中泊しながら京都を訪れ、ロケ地巡りをしたという。

 Nao☆ちゃん親子のようになりたくて、先日、娘と初めて映画館へ行った。一緒にみた『ドラえもん のび太の新恐竜』の舞台は白亜紀の日本なのでロケ地巡りはできないけれど、映画を再現したコミックスを娘にせがまれ毎晩読み聞かせしている。読み終わった途端、「あっち行って」とつれない娘に悶絶しながら、今夜も『カリプソ娘』を聴くFukiccoの父。

筆者:角田龍平の法律事務所 弁護士 角田 龍平

この連載を見る:
令和2年11月9日第3280号7面 掲載

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