【産業カウンセリングの現場から】第174回 一人ひとりの気持ちを聴く/白石 博

2019.02.12 【安全スタッフ】
  • TL
  • シェア
  • ツイート
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

香港での研修に参加して

カードビジネスサービス株式会社 代表取締役社長 産業カウンセラー 白石 博 氏

 まもなく平成が終わり新たな元号が制定される。「大化の改新」(645年)から数えて248番目とのこと。昭和から平成へと元号が変わったのが今から30年前である。

 当時私は2カ所目の配属先で県内全域のリース営業を担当していた。毎日遅くまで残業して休日出勤もあったが営業成績は思うように伸びず、方策が尽き混沌とした状態がしばらく続いた。若かったせいか肉体的な疲れはそう感じなかった。帰宅すると3歳の息子と1歳の娘の寝顔を見て癒された。

 このころ、まだイギリス領だった香港での研修に参加した。関連企業の現地法人を訪問し、街中を視察して日本とは異なる文化に触れることができた。研修の目的は確か「国際社会の一員としての視野拡大」で、今風にいうと「グローバル人材の育成」だろうか。私が特別に選ばれたわけではなく、勤続7年目で香港、15年目でハワイの研修制度があって応募すれば誰でも参加することができた。

自分だけでないことに気づき

 参加者一行は約40人、前泊を含む4泊5日の行程で研修が始まる。参加者の勤務地、担当業務、年齢などはさまざまで、共通点は入社年次が近いことだけ。中には入社以来会うことのなかった同期や常に上位の営業成績で表彰される有名営業マンなど見覚えはあるが、半数以上の人は名前と顔が一致しない。私は初対面では緊張しやすいほうだと思っているが、寝食をともにして行動すると自然とコミュニケーションが生まれた。現地ではハメを外して想定外の事態に遭遇することもあったが、同行者の助けでことなきを得ることができた。おかげで信頼感が高まりお互いに仕事上の悩みまで話せるようになっていた。何よりも周りに同じような問題を抱えている人がいることを知り、自分だけでないことに気づくとなぜか安心できた。またトップ営業マンからは、目標未達成でも決して言い訳はしない真摯な態度にも強い刺激を受けた。たった数日間であったが学びの多い研修となった。

 研修当時はバブル真っ只中で、流行語にもなった「24時間戦えますか?」のCMが始まった時代。上司からは残業するのは当たり前、疲れたら栄養ドリンクでも飲んで頑張れと言われたこともある。ストレスを感じたら趣味やスポーツをして気分転換をしたほうが良いことは聞いていたがそんな時間もなかった。そもそも自分自身ストレスが溜まっていることに気づいていなかった。適切な対処方法を知る由もなかったが、非日常の研修体験で心身ともにリフレッシュし偶然にも「セルフケア」ができていたのかもしれない。今振り返ると、とてもラッキーだったと思う。

 全国各地から参加する人気の研修で従業員のモチベーション向上の一助になっていたことは間違いない。残念ながら人気とは裏腹で数年後にこの研修は消滅することとなる。理由はいくつかあるが急激に社員数が増えたことで研修費用が突出したことや「業務割合」(研修全体の日程のなかで業務をしていた割合)を計算するとレクリエーション性が高いと判断されるため税務上の解釈の難しさもあった。

平成31年2月15日第2324号 掲載

あわせて読みたい

ページトップ