【裁判例が語る安全衛生最新事情】第471回 甲府市自殺事件 長時間労働の重圧で安全配慮義務違反 甲府地裁令和6年10月22日判決
事件の概要
被災者Aは大学卒業後、平成14年4月に被告Y市の職員に採用され、いくつかの部署に異動後、平成31年4月にA2課A3係に配属された。A2課は、事務改善による事務の効率化やコストの削減を図るとともに、適正な組織整備、事務事業の執行体制および職員配置のあり方などを踏まえた定員の適正管理を行うことを目的として、C課とD課の一部の業務分掌に内部統制を加え、平成31年度に新設された部署であり、課長はEで、先輩の係長はMで、亡Aも係長であった。
A3係の業務は、職員の定数管理業務も行っており、採用人数や退職者数、再任用者数、昇任者数などの管理を行うに当たり、誤りなく各部署の人数の調整を行わなければならず、データ上で人員数の不整合がある場合には、その原因を突き止めることを余儀なくされ、慣れるまで、その遂行に一定の時間を要する業務であった。また、職員の減員を行い、または増員の要求を認めない場合には、A2課A3係の係長が必要に応じて各部局の部長や室長などの幹部職員と交渉を行うことになっており、係長でありながら負担の重い地位にあった。
亡Aは、令和元年12月に、係長として初めて自ら主体となって非常勤職員の減員に係る交渉を行ったが、交渉は不調に終わり、亡Aは、次年度のことを考えて不安を覚えた。亡Aは、A2課A3係に配属されてから相当な長時間労働となり、また、休日も休めない状況で、令和元年5月19日から7月5日までの48日間、11月18日から12月27日までの40日間連続登庁していた。亡Aは心身不調となり、令和2年1月17日に自殺した。その後、地方公務員災害補償基金山梨県支部長は、同4年3月10日、本件を公務災害として認定した。
亡Aの両親である原告X1(父)、X2(母)は、Y市を被告として、首位的には、国家賠償法1条1項により、予備的には、安全配慮義務違反による損害賠償請求訴訟を提起した。
判決の要旨
1、亡Aの勤務実態
亡Aは、A2課に配属されてから本件自殺までの間、精神的な重圧を伴う業務に連日長時間にわたって従事し、特に繁忙期である令和元年5月~7月上旬まで、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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