【裁判例が語る安全衛生最新事情】第470回 養護学校教員事件 暴言へ対応怠り安全配慮義務違反 名古屋地裁令和6年1月30日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y市の設置する市立養護学校に通学していた原告Xは、①教員Aから、運動会の際に暴行を受けたほか、日常的に暴行を受けていたが、その学校の教員らがその虐待を制止しなかったこと、②学校のB校長およびY市の教育委員会が、教員Aに対して適切な人事権を行使しなかったこと、③教員Aが、カリキュラムに基づく授業の実施を怠っていたところ、B校長および教育委員会が、不適切なカリキュラムの実施を制止しなかったことなどにつき、教員Aに対しては、①および③について不法行為による損害賠償請求、Y市に対しては在学契約に基づく安全配慮義務違反により、慰謝料550万円の請求を求めたという事案である。本件は、運動会の暴言、暴行を撮影した動画が運動会の約10カ月後にテレビで報道され、社会的に大きな反響があったという事案である。
本件は、いわゆる労働災害ではないが、障害児という弱者に対する養護学校の教員によるハラスメントであること、および、B校長・市の教育委員会の安全配慮義務違反が問われている事案であるので、労働災害と共通する点もあり、参考になるものとして紹介することにした。
Ⅱ 判決の要旨
1、運動会における教員Aの行為
教員Aは、原告Xの学級担任の教師であったが、平成29年11月16日に行われた運動会の以前からAがXに対して、「ばか」「あほ」などの発言を使ったり、足で行動を促していた。他の教員らは、そのことをB校長に伝えていたが、B校長は一般的な注意指導をしていたものの、教員Aの生徒に対する対応が変わっていないことを認識していた。
そして、教員Aは、その運動会で、…
執筆:弁護士 外井 浩志
この記事の全文は、安全スタッフの定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら