【人事学望見】第1306回 基本判例◇安全配慮義務 労働契約締結で使用者が負う?!
労働契約の内容として、具体的に定めずとも労働契約に伴い信義則上当然に、使用者は労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っている――このことは、民法の規定からは明らかになっていないが労働契約法5条によって具体的規定となった。
自衛隊員は 国に責任あり
労契法の規定が登場する背景になったのは、国の安全配慮義務を問う陸上自衛隊事件(第三小判昭50・2・25)によるところが大きい。
事件のあらまし
陸上自衛隊員Aは、自衛隊内の車両整備工場で勤務中、後退してきたトラックにひかれて死亡した。
これに対し、Aの両親らは、国(Y)に対し使用者として、自衛隊の服務につき、その生命に危険が生じないように注意し、人的、物的環境を整備し、隊員の安全に万全を期すべき義務を負うにもかかわらず、これを怠ったとして、債務不履行に基づく損害賠償を求めて訴えを起こした。
一審判決(東京地判昭46・10・30)は、事故の翌日である昭和40年7月14日に遺族らが自衛隊駐屯地でAの上官らから事情を聞かされていたことなどをもって、「同日には損害の発生および加害者を知っていたというべき」であり、提訴はこれより3年を経過して起こされているから、損害賠償権はすでに時効消滅しているとして訴えを認めなかった。
二審(東京高判昭48・1・31)では、国は自衛隊員の使用者として隊員が服務することについて、隊員の安全に万全を期す義務があったのにこれを怠った責任があるとの主張を追加したが、…
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