【人事学望見】第1270回 母性保護めぐる法規制 産前産後休業の欠勤扱いは無効
男女雇用機会均等法の制定(85年)以降、労基法の女性に関する諸規制は年少者とは独立の章とされ、女性一般の保護を縮小・廃止し、妊産婦保護に純化していくことになった。均等法では、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い禁止が規定(9条)されるに至った(荒木尚志)。
出勤率90%以下賞与なし
最高裁まで争われたのは東朋学園事件(最一小判平15・12・4)である。
事件のあらまし
学校法人Yで期間の定めのない労働契約に基づき事務職として勤務しているAは、8週間の産後休業を取得し、育児休業に代わる1時間15分の勤務時間短縮措置を受けた。Yは、賞与の支給について、1年を6カ月で2分した各期間につき出勤率90%以上の者、という要件を就業規則で定め、詳細はその都度知らせるとしていた。
Aが産前産後休業を取得した期間と、育児休業に代わる勤務時間短縮措置を受けていた期間に対応する賞与の支給につき、各回覧文書は、産前産後休業取得日と、勤務時間短縮措置時間数を所定労働時間数で除して算出した分を「欠勤日数」に加算するとした。
同文書によると、出勤した日数を出勤すべき日数で除し、その割合(出勤率)が90%以上である者を支給対象者としていた。これに基づくと、Aはいずれの期間も90%を満たすことができず、支給対象者から除外され各期間に対応する賞与が不支給とされた。
そこでAは、取扱いの根拠である就業規則の定めは、(平9年改正前の)労基法65条・67条および(平7年改正前の)育介法10条の趣旨並びに公序に違反するなどとし、Yに対し不支給とされた各賞与の支払いを求めて提訴した。一、二審ともAの主張を容れたためYが上告した。…
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