【ケーススタディー人事学Q&A】第51回 賃金の非常時払い 法令上義務は負わず 引越せずホテルから通勤/西川 暢春
2025.07.17
【労働新聞】
【Q】 D卸売会社の人事担当者は、引っ越しを控える社員Eから相談を受けた。購入した物件の入居予定日が延期となり、最低でも2週間、住むところがないらしい。「実家から通うよりもホテルから通う方が安い。今月働いた分の賃金を先にもらえないか」とのこと。この場合、賃金の非常時払いに該当するのだろうか……。
実家からは対象だが
【A】 労働基準法により非常時払いが義務付けられるのは、①出産、②疾病、③災害、④その他厚生労働省令で定める非常の場合である(労働基準法第25条)。そして④の「非常の場合」として定められているのは、「労働者の収入によって生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合」、「労働者又はその収入によって生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合」、「労働者又はその収入によって生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたって帰郷する場合」の3つだ(労基法施行規則第9条)。これらのいずれかに該当する場合、労働者がその費用に充てるために賃金を支払期日前に支払うことを請求したときは、使用者は応じなければならない。違反には刑事罰が定められている(労基法第120条第1号)。
ただし、この義務により支払い対象となるのは、…
筆者:咲くやこの花法律事務所 代表弁護士 西川 暢春
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令和7年7月28日第3506号12面 掲載