【裁判例が語る安全衛生最新事情】第464回 宮崎交通事件 出張の負担軽減せず安全配慮義務違反 宮崎地裁令和6年5月15日判決
Ⅰ 事件の概要
亡A(死亡時37歳)は、自動車運送事業などを業とする被告Y社に雇用されたが、加工食品の販売などを目的とする会社B社に出向しており、そのB社の本部の営業部に所属して係長(アシスタントディレクター)として、ルート営業を担当していた。そこでは、取引先からの注文に応じて商品部門担当者が準備した商品を取引先に納入し、帰社後にはパソコンを使用して伝票の整理や日報の作成をしていた。また、商談を担当して遠隔地の店舗に出張して商談を行い、出張後はパソコンを使用して商談リストを作成していた。
平成23年5月16日、鶏の炭火焼を商店におろしていたところ、その商品を購入したお客から異臭がするとのクレームがあり、その原因は真空パックの不具合によって鶏の炭火焼が腐敗したというものであり、当該商品を店頭から撤去するように指示され、亡Aもその業務に従事した。
亡Aは、平成23年5月25日、出張を終えて午後10時30分ごろ帰宅し、11時ごろ食事を終えて横になりながらテレビを見ていたが、翌日の1時10分ごろに居間で倒れているのを発見され、緊急搬送されたものの、2時14分に死亡が確認された。
原告X1は亡Aの妻、X2、X3はその子である。X1らは、B社の吸収先となるY社を被告として安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求した。これに先立ちX1が労災請求したところ、所轄労働基準監督署長はこれを不支給決定し、審査請求も棄却されたが、行政取消訴訟では一審で業務起因性を認めて逆転で不支給決定が取り消され、その控訴審(福岡高裁宮崎支部平成29年8月23日判決)もそれを維持してX1には労災保険金が支給されている。
Ⅱ 判決の要旨
1、亡Aの勤務実態
亡Aの本件発症前6カ月間の時間外労働時間数は、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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