約30年前、私が熊本労働基準局長を務めていたころ、アメリカの企業を視察することになり、その視察企業の一つに、ヒューレット・パッカード社がありました。当時は、現在ＧＡＦＡと呼ばれている企業はまだ影も形もなく、ヒューレット・パッカード社こそが、シリコンバレーを代表する企業でした。

　この会社は、スタンフォード大学を出たばかりの若いヒューレットさんとパッカードさんのお二人が、自宅のガレージでＩＴ企業を創業、大発展を遂げて、シリコンバレーの代表的な企業になった、ということでありました。その起業した自宅のガレージがカリフォルニア州の産業遺跡として保存され、当地では、とても存在感がある企業でした。本社事務所の建物は、樹木が鬱蒼と茂る広大な森の中にあり、何となく大学のような佇まいで、応接をして頂いた安全衛生を担当するバイスレジデントも、医学部出身ということでした。

　彼は知的な雰囲気を漂わせながら、…

執筆：一般社団法人 労務安全監査センター 代表理事　東内 一明