労働裁判ニュースまとめ【2025年4~6月】転籍合意 「自由意思論」適用されず 契約地位承継を認定/県の安全配慮義務違反認定 病気増悪がなくても ほか
『労働新聞』で配信したニュース記事の中から、2025年4月7日号~6月23日号で公開した労働裁判関連の記事をまとめてご紹介します。
転籍合意 「自由意思論」適用されず 契約地位承継を認定 東京地裁
転籍にかかる合意が争点となった裁判で、東京地方裁判所(小川弘持裁判長)は、自由意思に基づく同意と認められる客観的・合理的な理由が必要とした山梨県民信用組合事件の判断枠組みは転籍の意思表示が問題となる場面では適用されないとする判決を下した。
県の安全配慮義務違反認定 病気増悪がなくても 千葉地裁
千葉県内の児童相談所で働いていた労働者が、長時間労働などにより退職を余儀なくされたと訴えた裁判で、千葉地方裁判所(小林康彦裁判長)は同県の安全配慮義務違反を認め、慰謝料など計50万円の支払いを命じた。
労基法38条1項 割増賃金支払い義務負わず 他社就労不知の場合 東京地裁
短時間・単発で働くスポットワークに従事した労働者が、大手スポットワーク会社に割増賃金などの支払いを求めた裁判で、東京地方裁判所(八屋敦子裁判官)は、他社で就労している事実を事業主が知らない場合、労働基準法第38条(時間計算)1項による割増賃金の支払い義務を負わないとする判決を下した。
退職金 1200万円の不支給適法に バス運賃1000円着服で 最高裁
京都市交通局でバス運転者を務めていた労働者が、退職金の全額不支給などを不服とした裁判で、最高裁判所第一小法廷(堺徹裁判長)は同市の不支給処分を適法とする判決を下した。労働者は1000円のバス運賃着服、車内での電子タバコ使用により懲戒免職と1200万円の退職金の全額不支給処分を受けた。
休憩時間 付与ない勤務へ差止命令 労基則例外に該当も 東京地裁
ジェットスター・ジャパン㈱で客室乗務員(CA)として働く労働者35人が、休憩が十分に取れない勤務を不服とした裁判で、東京地方裁判所(髙瀬保守裁判長)は慰謝料計385万円の支払いと、休憩時間を付与しない勤務の差止めを命じた。
パワハラ 慰謝料160万円支払を命令 長時間常態化踏まえ 東京地裁
道路・鉄道構造物の設計などを手掛ける東京都内の会社で働く労働者2人が、代表取締役らからパワーハラスメントを受けたと訴えた裁判で、東京地方裁判所(前田芳人裁判官)は代表取締役らに慰謝料計160万円の支払いを命じた。同社は毎年10月~翌年3月までが繁忙期で、この間は多くの従業員が月100時間を超える残業をしていた。
発言過激化は労組にも責任 救済命令取消を維持 東京高裁・ジャパンビジネスラボ事件
キャリアデザインスクールの運営などを営む㈱ジャパンビジネスラボが中央労働委員会による救済命令を不服として訴えた裁判で、東京高等裁判所(鹿子木康裁判長)は一審の救済命令取消しを維持した。
退職日前倒しは実質“解雇” 労働者指定の日より 東京地裁
衣料品の小売などを営む東京都内の企業で働いていた労働者が、解雇予告手当の支払いを請求した裁判で、東京地方裁判所(田原慎士裁判官)は解雇予告手当20万円と同額の付加金の支払いを命じた。労働者は約1カ月半後の日付での退職を申し出ていたが、同社はそれよりも前の日付を退職日と指定していた。
減給処分 制限超過部分のみ無効に 全体は違法といえず 東京地裁
東京都内の一般財団法人で働く労働者が減給の懲戒処分を不服として訴えた裁判で、東京地方裁判所(安岡美香子裁判官)は処分のうち、労働基準法が定める減給額の制限の超過部分を無効とする判決を下した。制限を超えた減給がなされたとしても、必ずしも処分全体が違法・無効となるものではないと指摘。