【裁判例が語る安全衛生最新事情】第466回 大和高田市事件 足の負担軽減せず安全配慮義務違反 奈良地裁令和4年7月15日判決

2025.06.10 【安全スタッフ】
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Ⅰ 事件の概要

 原告Xは、一般職職員として昭和61年4月にY市に雇用されて業務に携わってきたが、平成9年5月に交通事故に遭い、右足関節捻挫、右大腿部打撲などの障害を負い、自賠責共済(自動車損害賠償責任共済)において右足関節機能障害により後遺障害等級12級12号の認定を受け、平成10年11月には、奈良県から右足関節機能障害5級の身体障害者手帳の交付を受けた。Xは平成17年4月に、生活保護受給者の自宅を訪ねる庁舎外の業務があるM課に配属され、生活保護受給者の自宅訪問を数多く行い、その訪問の回数は平成19年、20年ともに年間400回を上回っていた。

 Xは、M課に配属されたころから右足に違和感や疼痛を覚えるようになり、右足をかばって不自然な歩き方をしており、M課の課長であった上司は、Xの右足の状態からM課の勤務は難しいと判断し、人事課に伝えたが、異動になるわけではなく、平成21年4月にはM課係長に昇進した。昇進後、Xが係長として家庭訪問に同行した件数は、前任の係長に比べて大幅に増加していた。

 平成28年3月に、Xは奈良県弁護士会に人権救済の申し立てを行い、同弁護士会は、平成30年1月Y市の配属部署について、下肢への負担が少なくなるような合理的配慮を勧告した。しかしながら、Y市はXからの事情聴取を行うことはなかった。

 Xは、Y市に対して、国家賠償法1条1項または安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。

Ⅱ 判決の要旨

1、Xの症状の悪化

 本件事故後、Xの右足関節の症状が悪化し、右足関節を固定術を受けるに至ったが、この右足関節固定術を受けるに至るまでの受診状況や医療機関による所見などは必ずしも明らかではない。しかしながら、本件において、Xの症状の経過や医療機関における所見などを認定する意味は、Xの業務と右関節症状の悪化の法的な相当因果関係を明らかにすることにある。

 そうすると、本件のような場合には、…

執筆:弁護士 外井 浩志

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2025年6月15日第2476号 掲載
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