暴力団組長は民法上の「使用者」か? 構成員による襲撃は「事業の執行」か? 福岡地裁

2019.06.03 【Web限定ニュース】
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 暴力団の構成員による襲撃を受けた被害者らが、指定暴力団「工藤會」の組長らに民法715条(使用者等の責任)に基づき損害賠償を請求した2つの裁判で、福岡地方裁判所(鈴木博裁判長)は組長らに計6500万円の支払いを命じた。1件は元警察官が平成24年4月19日に工藤會の構成員から銃による襲撃を受け負傷した事案で、もう1件は26年5月26日に市民が刃物で胸部や下腹部などを計7回刺され負傷した事案。どちらも判決日は4月23日となっている。

 元警察官への襲撃事件は民法719条(共同不法行為者の責任)で解決が図られた。構成員と被害者の関係から、個人的に襲撃する動機は認め難く、指示に基づき敢行したとみるのが合理的と判断。襲撃は組長らの指示に基づき実行されたものであり、共同不法行為に該当するとし、治療費や慰謝料など計1623万5965円の支払いを命じた。

 市民への襲撃事件では、襲撃が民法715条の「事業の執行」といえるかと、組長らが「使用者」に該当するかが争点となった。被害者は、組長は構成員を直接・関節に指揮監督する立場であり、襲撃は暴力団の資金獲得活動であったと主張した。

 同地裁は、「襲撃は被害者の関係者を畏怖させ、利権や金員を得ようとしてなされたものと認めるのが相当であり、工藤會の運営に不可欠な資金獲得のため、すなわち、その事業の執行について行われたものであるというべき」と判断した。組長らについても、構成員をその指示の下に資金獲得活動に従事させていたとして、使用者であると認定し、治療費や慰謝料など計4824万6080円の支払いを命じている。

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