【主張】正社員化で“流出”防止を

2023.07.13 【主張】
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 非正規労働者のキャリアアップを後押しするため、厚生労働省が新たな公的職業訓練の導入に向けた検討を行っている(=関連記事:非正規向け公的訓練 柔軟な日程・手法を検討 受講しやすさカギに 厚労省)。現在の勤務先での正社員化や、異なる職種・企業での正社員就職をめざすうえで必要な能力の習得を手助けするという。

 企業側からみると、人材不足が深刻化するなか、戦力として活躍している人材が他社に流れてしまうのは回避したいところ。だが、キャリアアップをめざす労働者が増えれば、自社に正社員化の道がなかったり、正社員になっても賃金がほとんど上がらなかったりする企業では、人材流出は避けられないだろう。

 非正規労働者に対する新たな訓練の導入は、「三位一体の労働市場改革」の重点項目である「リスキリングによる能力向上支援」の一環。非正規労働者については、企業における訓練機会が乏しい点などが課題になっていた。

 厚労省が6月30日に公表した最新の能力開発基本調査の結果によると、正社員にOff―JTを実施した事業所割合が70.4%に上るのに対し、正社員以外に実施した事業所は29.6%。コロナ禍以降は、ますます差が広がっている。

 このため厚労省では、在職中の非正規労働者が受講しやすい職業訓練を導入する考え。受講時間が自由に選べるオンデマンド型eラーニングや、通所不要のオンライン訓練など、柔軟な訓練日程・手法を検討し、非正規労働者の積極的な受講を促す。

 受講方法などを柔軟化することで、受講のしづらさを理由とした訓練中の離脱は少なくなることが見込まれる。

 ただ、非正規労働者が自社内でのキャリアアップを期待して自発的に受講したとしても、社内に正社員登用の仕組みや、スキル向上に応じた処遇改善施策などがなければ、かえって就業意欲が低下しかねない。同業他社での正社員化をめざす可能性もある。

 人材獲得競争が激しくなるなか、企業においては、パート・有期労働者についても、キャリアアップへの意向を確認し、能力向上や業務内容の高度化に応じて処遇が改善する仕組みを整えておきたい。

令和5年7月17日第3409号2面 掲載

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