【主張】将来を約束する能力開発

2018.10.18 【主張】
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 厚生労働省の平成30年版労働経済白書(労働経済の分析)によると、欧米諸国と比較して企業の能力開発費が著しく低レベルにあることが改めて浮き彫りとなった。

 日本を技術立国として次世代に引き継ぐには、第4次産業革命においてイノベーションの主導的立場を取り戻し、その成果を産業や社会生活に広く取り入れていく必要がある。日本の将来に向け極めて重要な時期にあるが、未だ能力開発に消極的な現状を憂慮せざるを得ない。

 日本は、長期にわたるデフレの影響もあり、手を付けやすい能力開発費が継続的に削られてしまった。同白書によると、GDPに占める能力開発費の割合は、アメリカの2.1%、フランスの1.8%、ドイツの1.2%に対し、日本は何と0.1%だった。

 AI、IoTなどの最先端技術の普及に向けたイノベーションがすでに始まっているなかで、このまま能力開発費の著しい低迷が続くようでは、技術立国として成立している日本を次世代に引き継げるか不安である。イノベーションにおいて、これ以上世界の後塵を拝することになれば、将来得べかりし利益が縮小してしまうだろう。

 しかし、同白書によると、僅かながらではあるが、回復の兆しが生じており、光明を見出したい。1社当たりの能力開発費の平均額をみると、2015年から一転して増額に転じている。14年に500万円を下回っていたが、17年には545万円となった。厳しい人手不足で、能力開発の必要性が高まっているのが背景にある。アベノミクスによる経済政策と軌を一にしているといっても良い。

 企業の能力開発に対する考え方は、依然としてゼネラリストの採用・育成に比重があるが、今後の展望においては、グローバル活動やイノベーションを重視し、スペシャリストの採用・育成に目が向けられている。スペシャリスト確保のため、企業規模を問わず中途採用市場が活発化し始めているのも事実だ。

 日本経済は、いま復活再生の岐路に差し掛かっている。能力開発への積極的投資が将来を約束することになろう。

平成30年10月22日第3181号2面 掲載

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