【主張】人への投資にもう一手を

2022.07.14 【主張】
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 厚生労働省がまとめた「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」は、企業主導型の職業訓練の強化を図り、労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを促すことが重要と訴えている。冒頭からOff―JTや自己啓発支援の必要性を指摘し、日本企業ではそれらの費用がGDP比で0.1%(2010~14年の数値)に過ぎず、米国(2.08%)やフランス(1.78%)に比べて低水準に留まるなどと問題提起している。

 人事に携わる者としては、人への投資を強調するガイドラインの内容には意を強くしながらも、人材育成はもっぱら労使の役割なのか……とボヤきたくなる面もあるのではないか。職務限定のジョブ型雇用が大きな関心を集めるなか、高等教育機関の役割にも期待したいのが、産業界の本音ではないか。

 文部科学省の学校基本調査によると、この30年で大学(学部)への進学率は25.5%から54.9%にまで高まっている。2割以下だった女性で5割を超え、男性も3割台から6割弱に上昇した。結果として、少子化への懸念が繰り返し語られてきたにもかかわらず、年間の大学卒業者数はジリジリと伸び続けている。

 一方、同省による科学技術指標(2019年)では、日本の修士号、博士号の取得率が欧米諸国に水をあけられているのが分かる。人口100万人当たりの修士号取得者数は、日本の588人に対して英国は7倍強の4216人、米国、ドイツ、フランスでは2000人を超える。同様に博士号取得者をみても、日本の120人に比べて英国375人、ドイツ336人、米国281人などと2~3倍の差が付いている。高学歴化の進展は、これらの数字をみる限り一面の事実でしかない。

 就職活動やインターシップのあり方をめぐり、これまで産学の意見は必ずしも一致してこなかった。理系の修士卒を除いて、多くの企業が院卒の採用に消極的な面も否定できない。それでもリスキルという課題であれば、ニーズが噛み合う余地はあるのではないか。人への投資の推進に、もう一手を期待したい。

令和4年7月18日第3361号2面 掲載

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