【ひのみやぐら】心理的に仕事と距離を置く

2018.08.09 【社説】

 古い話で恐縮だが、15年ほど前に家具店でソファを買ったときのことだ。ちょっと、確認したいことがあったので、家具店に電話を入れたところ、担当者が休日で分からないという。とくに急ぎの用ではないので、日を改めて電話をすることにしたが、2~3時間後に家具店から折返し電話がきて、要件は無事確認できた。

 家具店側が担当者の携帯電話に連絡を入れ、要件を確認したとのことだが、せっかくの休日に、仕事のことを思い出させるようなことをして何か申し訳ないような気持ちになったのを覚えている。おそらく店側としては、顧客満足度に対する考えが強かったのではと想像する。当時の景気は、現在と比べれば、それほどよくなかったものと記憶している。顧客のニーズに応えていかないと厳しい業界を生き残れない経済事情があったかもしれない。もうひとついえば、「働き方改革」という言葉が生まれるずっと以前で、店側からしても「電話1本くらい」と深刻に考える時代でもなかったと振り返る。

 昔から風呂敷残業という言葉があるように、仕事を家に持ち帰って行う人は少なくないだろう。近年は、情報通信機器が発達したことで、さらに持ち帰りがしやすくなったに違いない。とくにスマートフォンは、社内で使用する自分のパソコンのメールを使うことができるので便利な反面、勤務時間外や休日にも手軽に利用できてしまう。

 これまで国は、過労死や過重労働問題で、長時間労働防止や休日確保を主に取り組んできた。また、勤務終了時と翌日の開始時間を一定期間空けて、休息を確保する「勤務間インターバル制度」も進めている。時間的に仕事から離れるのは健康面で必要だが、一方で、休憩が確保されていてもスマホなどが手放せないことによって、心理的に拘束感が残る点は今後の課題だろう。フランスでは勤務時間外の仕事のメールや電話は応えなくていいという法律が施行されたが、公私が曖昧な日本人には、まだまだハードルが高そうだ。

 心理的に仕事と距離を置く――よりよい仕事をするために何が必要か、われわれは考えていかなければならない。

掲載 : 安全スタッフ 平成30年8月15日第2312号

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