【ひのみやぐら】自殺大国脱却はいつ?

2019.07.26 【社説】
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 昨年度、国が認めたいわゆる「過労死」の件数は703件。1988年の「過労死110番」開設以降、昨年ちょうど丸30年が過ぎた。なのに未だこれだけの件数が導かれる実態をどう見たらいいのか。

 厚生労働省が定める過労死の範囲には、脳出血やくも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞などの「脳・心臓疾患」とうつ病を中心とした「精神障害」が含まれる。過重な仕事が原因になったケースに限られ、いずれも前年度と比べた保険支給決定件数は減っている。しかし、世界中から人が集まる東京オリパラ前々年の数字としては間違っても誇れるものではなく、依然「KAROSHI(カロウシ)」大国のそしりは免れない。

 なかでも「うつ病」の影響で正常な判断能力や抑止力を著しく欠いた状態で行われた自殺案件が76件もあり、日本標準産業分類の「中分類」でみた支給決定件数の多い業種を上から順に並べると、機械器具小売業6件、道路貨物運送業、総合工事業、設備工事業、飲食店が各5件、医療業、情報サービス業、食料品製造業、輸送用機械器具製造業が各3件となる。同じ分類で職種別にみると、法人・団体管理職員10件、一般事務従事者と建築・土木・測量技術者がともに9件、営業職従事者6件、自動車運転従事者5件などという具合いだ。

 繰り返すが、過重な業務による心理的負荷などを理由にうつ病を患い、正常な判断能力を失って自ら命を絶った労働者の件数である。ここは読者の想像力に頼るしかないが、自制心が効かないほどに心を病むとはどういうことか、その挙句、自殺行為に走った労働者がこれだけいる実態を是非とも心に刻んでいただきたい。「業種別、職種別にみれば多くて10件」という見方は事態を見誤っていよう。

 ことほどさように「職場」という空間には人を狂わす根の深い問題が横たわっているように思える。日本の自殺者数が有意に多いとしたWHOの調査もあり、働き方改革の名で進む労働時間短縮の取組みだけでは補いきれない何かが。職務の切り分けが曖昧な日本で、仕事を背負い込みがちなタイプに仕事がしわ寄せられることをかつて本誌で指摘した大野正和さん(亡)の言葉が思い出される。

2019年8月1日第2335号 掲載

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