【主張】金銭救済制の早期創設を

2022.05.12 【主張】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

 厚生労働省は、解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する専門家による検討会報告書を作成した(関連記事解雇無効時の金銭救済制度 権利行使は労働者に限定 有識者検討会が報告 厚労省)。解雇が無効となった場合、労働者の請求に基づき使用者が労働契約解消金を支払うことによって労働契約を終了させる制度を法的側面から詳細に検討している。

 これまでほとんど動きがなかった日本の解雇法制に新風を吹き込む制度として期待できるが、いかんせん検討期間が長過ぎる。労働政策審議会での議論を早急に終えて、直ちに国会へ法案提出すべきである。

 解雇をめぐる個別労働関係紛争の多くが金銭で解決されている実態があることなどを考えれば、労働契約解消金の水準を明確化して予見性を高めることで、労働者保護につながる可能性がある。水面下で横行している解雇権濫用法理に反する解雇の抑制にも役立つだろう。労働契約終了の新しい選択肢となり、一定程度の雇用の流動化にも寄与する。

 ただ、議論や検討の期間が余りにも長過ぎたのは否めない。日本の労働生産性が世界的に低水準にある一要因に、他の先進諸国と比較して雇用の流動性が乏しいことが挙げられる。この間、日本の経済は長期間にわたって相対的に弱体化してきた。労働生産性を高める一つの手段として、雇用の流動性を高めて人材の適正配置に結び付けるべきであった。

 同制度が厚労省内で正面から議論されたのは、労働契約法制定前の今から17年以上も前のことである。平成17年(2005年)の専門家による研究会報告は、同制度が解雇事件の柔軟な解決と紛争の処理迅速化に資するとして、法制化を提起していたのだ。実は、その時点で労働契約法の一項目として盛り込む予定もあった。

 今回新たにまとめた検討会報告書では、労働契約解消金の上限・下限を含め、肝心な具体的水準が明確になっていない。今後の労政審の検討に預けた形となっているが、早期に結論を出すべきである。同制度が創設されれば日本の解雇法制が一歩前進することになるだろう。

令和4年5月16日第3352号2面 掲載

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。