【主張】解けない解雇権濫用法理の呪縛

2014.05.05 【社説】

 厚生労働省は、労働判例などを分析・類型化した「雇用指針」を明らかにした(本紙4月14日号1面参照)。解雇について、使用者側は金銭解決制度の導入などを働きかけているが、指針ではまったく触れていない。わが国は、先進諸国の中でも「最も解雇が難しい」というのが、定説である。判例法理を法文化した労働契約法16条では「解雇は客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定している。この解雇権濫用法理は使用者の悩みの種。適正配置が思惑どおりにいかないからだ。

 対極にあるのが、米国の解雇ルールだ。日本労働研究機構(当時)は、03年に「諸外国(独・仏・英・米)における解雇のルールと紛争解決の実態」をまとめたが、調査研究員に小宮文人(北海道学園法学部教授=当時)、野川忍(東京学芸大学教育学部教授=同)を始めとする斯界の権威を集めた力作である。

 米国の雇用契約関係は、「契約の自由を基礎とする各州のコモンローにより規制されている。したがって、米国では解雇自由が雇用契約上の原則である」。「解雇を直接的実質的に規制する法律はモンタナ州以外にはない」等々、わが国の使用者からみれば、うらやましいような状況にあるのが実態である。

 雇用指針の発表に当たって設けられた記者会見の席上、田村厚労大臣は「あくまでも今までの判例などを類型化したもので、企業側のみならず労働者側にも参考にしていただきたい」と話し、決して解雇しやすくするためのものではないと注意を促した(1面記事)。使用者とてやみくもに解雇を迫っているわけではなく、指針で例示された①労働者の労務提供の不良②能力不足、成績不良、勤務態度不良③職場規律違反、職務懈怠③経営の必要性等による解雇について、民法627条に規定する解雇権を認めてほしい、といっているに過ぎない。

 しかしながら、解雇権濫用法理は無期雇用契約のみならず、有期雇用の雇止めでも類推適用され、使用者の呪縛は、永遠に解けない感がある。

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掲載 : 労働新聞 平成26年5月5日第2967号2面

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