【主張】「金銭解決」の制度化急げ

2015.07.20 【社説】

 厚生労働省がいよいよ解雇法制の見直しに向けた本格的検討を開始するという。本紙報道(7月13日号1面)によると、今後少なくとも1年程度を検討期間に充て、その結果次第では予見可能性の高い紛争解決システムの整備に向けた法改正を実施する見通しという。このペースだと、関係法案の提出は、早くても再来年、平成29年の通常国会になる。

 解雇法制の整備は、長年にわたりわが国の大きな課題だった。アベノミクスの一環としてその一部でも実現されることになれば、労働法制の大きな前進と捉えることができ歓迎したい。検討期間が1年程度となることは致し方ないとしても、再来年の通常国会には法案を提出し、最短で成立させる努力を続けてもらいたい。

 今回主な整備対象になっているのは、いわゆる「解雇の金銭解決制度」である。欧州の主要国ではすでに何らかの形で、長年にわたって運用されてきている。たとえば、イギリス、ドイツ、イタリアなどである。整備されていない先進国は、ほとんど日本だけとなっている。アメリカについては、原則的に解雇制限がないため、金銭補償の概念がない。

 解雇の金銭解決制度が求められる大きな理由の1つに、諸外国からみてわが国の雇用慣行が不透明で分かりにくい点が挙げられる。解雇紛争が発生した場合、どのような解決策が採られているのか、金銭補償の水準を含めた実態が明らかになっていない。これでは対日投資、対日進出を阻む要因となってしまう。経済再生は緒に就いたばかりであり待ったなしである。

 もちろん、外国企業だけに供するものではない。中小・零細企業を中心に横行している不当解雇に対する一定の歯止めともなろう。金銭解決手続きを明確にして周知が行き渡れば、不当解雇された労働者の助けになる。金銭補償の水準が雇用形態や勤続年数別に明確になっていれば、申し立てる側のイメージもしやすくなる。

 解雇紛争の実態の精査から導いた制度設計なら納得のいくものができるだろう。

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掲載 : 労働新聞 平成27年7月20日第3025号2面

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