【主張】誤解生むガイドライン案

2017.01.23 【社説】

 働き方改革実現会議が同一労働同一賃金ガイドライン(案)をまとめた。フランスやドイツなどの欧州諸国では、職務あるいはポストを対象とした採用が主流で、賃金決定も企業横断的、雇用形態横断的に行われており、まさに同一労働同一賃金が成立しやすい。しかし、日本では企業別の職能資格制度に基づく職能基準が主流で、仕組みが大きく異なる。

 日本が欧州諸国の賃金決定システムを模範とし、同質化をめざすなら理解できるが、そうではない。「同一労働同一賃金」と称するのは、一般社会に誤解を生む恐れがある。均衡処遇ガイドラインなどと正確な表現に改めるべきである。

 同ガイドラインをみると、たとえば基本給では、能力・経験または業績・成果に沿った決定、手当では役職・責任の範囲に見合った支給を促している。こうした賃金決定の適正化は、これまでも長期間にわたり、それぞれの企業で試みられてきたもので、何ら新しいことではない。目標管理制度が広く導入されたのも賃金決定における説明責任が果たされ、社員の納得につながる側面があるためだ。

 ただ、賃金決定の適正化対象に非正規が除かれていたのは事実である。このため、正規と非正規が仮に同じ責任の同じ職務に従事していた場合でも賃金格差が生じていた。

 同ガイドラインが焦点を当てているのはこの部分である。正規か非正規かという雇用形態にかかわらず均等・均衡待遇を確保するのが目的とはっきり明言している。

 本欄では従来から日本ではいわゆる欧州並みの同一労働同一賃金の実現は無理と指摘してきた。日本の賃金決定システムも評価すべき利点が多く同質化する必要はない。今回のガイドラインをみる限り「同一労働同一賃金」と称するには無理がある。どうしてもというなら、一企業内に留まることを明確にすべきだ。

 正規と非正規間の不合理で説明のつかない賃金格差は早期に是正されるべきであることは確かである。しかし、従来からの同一労働同一賃金概念との誤解や大風呂敷は避けるべきだ。

掲載 : 労働新聞 平成29年1月23日第3097号2面

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