【主張】定年後に明確な区切りを

2016.06.06 【社説】
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 定年後再雇用時の賃金引下げに対する判決が東京地裁から出された(本紙5月30日号3面既報)。人事賃金制度を曖昧にしたまま定年後に引き継ぐリスクが現実のものとなったと考えられ、広く企業に警鐘を鳴らしている。

 原告の労働者3人は、セメントや液化ガスの運送会社に運転者として勤務し、60歳定年後に有期契約の嘱託社員となった。その際、3割程度賃金が引き下げられたため、労働契約法第20条に違反し無効として提訴した。原告らは定年後も引き続き同じ運転者として勤務を続けており、職務の内容や配置の変更範囲などに変動はなかったという。

 判決では、被告会社の賃金体系に着目している。基本給に年功的要素が取り入れられているものの、他の賃金項目(職務給、精勤手当など)には勤続年数や年齢による違いがないとしたうえ、その基本給についても、最も低い在籍1年目で8万9100円、最も高い在籍41年目で12万7100円で、差額は3万8000円しかないとした。

 月例賃金と賞与分を考慮するとこの基本給に基づく年間賃金の差額は最大で64万6000円に留まるが、今回争われた定年後の賃金引下げ幅はこの額を大きく上回る規模であったという。つまり、職務の内容などに変更がないにもかかわらず、賃金を大幅に引き下げたことに対する合理的説明が不可能となった。結局、若い運転者を新規に採用するより効率が良く、専ら賃金コストを抑えるのが目的と指摘されてしまった。

 労契法が誕生し、そして同一労働同一賃金の法整備がさらに進もうとしている現在、定年後の不用意な賃金引下げが違法となる可能性が高まっていることを証明している。運転者のような職務基準の職種ではなおさらだろう。

 企業としては、定年前後で職務の内容、責任の重さ、将来的な異動の範囲などに変更があることについて明確な説明をしかつ合意を得て、賃金制度をそれに見合った仕組みに改編する必要がある。賃金引下げ幅も適正に設定し、全体として合理性を説明できるよう準備すべきだ。控訴審の判断にも注目したい。

平成28年6月6日第3067号2面 掲載

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