【主張】日本型人事に十分配慮を

2016.03.21 【社説】

 「同一労働同一賃金」へ向けた動きが急ピッチで進んでいる。非正社員の賃金水準を正社員に近付ける狙いについては基本的に賛成だが、日本型人事制度の理不尽な破壊は許されない。現行システムによって守られている利点も少なくなく、バランスを考えた現実的な法改正を望む。

 政府は、労働契約法やパート労働法、労働者派遣法などを見直して「同一労働同一賃金」を推し進めようと考えているようだ。たとえば、労契法第20条では、期間の定めがあることを理由とする不合理な労働条件設定を禁止している。この労働条件には、賃金や労働時間、教育訓練、福利厚生など一切の待遇が包含される。同条により、格差が不合理と認められると、その労働条件の定めが無効となるほか、不法行為として損害賠償請求の根拠ともなる。

 しかし、同条の解釈では、労働条件に格差があっても、直ちに不合理と解するわけではない。労働者が担当している業務内容に加え、責任の程度、配置の変更範囲の違いその他の事情を考慮するとしている。つまり、今後の見込みも含め、転勤・昇進などの人事異動や本人の職務上の役割の変化なども不合理の判断要素となる。

 安倍総理大臣は、先の一億総活躍国民会議において、ガイドライン整備の意向を示したという。具体例に基づいた丁寧な説明を加えれば、格差が不合理か否かの判断がしやすくなり、予見性が高まろう。その際、労契法などの解釈がベースとなることは明らかである。

 経済団体からは、ガイドライン整備もそう簡単にはいかないという声が挙がっていて慎重姿勢である。企業側が現時点で、各論反対の立場とならざるを得ないのは理解できるが、正規・非正規間の賃金格差は社会的に許容できない状態にあることも確かだろう。何らかの法的対応が迫られているのも現実である。

 ガイドラインによって予見性を高め、企業側に説明責任を課すという程度の法改正であれば、受け入れられる余地はある。強い強制力をもって格差是正を図るには、まだ多くの時間が必要といえる。

掲載 : 労働新聞 平成28年3月21日第3057号2面

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