【主張】不合理性の判断は微妙に

2020.10.22 【社説】
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 最高裁は、大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件で判決を示し、正規社員と非正規社員の賞与、退職金の支給格差に不合理性はないと判断した。職務内容や人材育成・配置の違いなどのバランスを考慮すれば、極めて妥当な判断といえる。しかし、「同一労働同一賃金」の原則が実定法上の法規範となった現在とは様相が異なる。細心の注意をもって法規範に対処しないと、違法と判断される可能性が高まろう。

 メトロコマース事件を例にとると、長期雇用を前提とする無期契約労働者と1年以内の契約を更新する契約社員の退職金格差が問題となった。実は、1年以内の契約社員とはいっても、長期間にわたって契約が更新され、定年に達するまで10年前後勤務していた。東京高裁は、事実上の長期雇用を重視し、契約社員に退職金を一切支給しないのは、旧労契法第20条に反するとした。

 これに対し最高裁は、両者の業務内容はおおむね共通しているものの、休業者の代替業務、複数店舗の統括、売上向上の指導、トラブル処理など高度な業務をも担当していたことから、高裁判決を覆した。無期契約労働者に限り退職金規定を設け、支給していたことを容認している。

 両判断は、不合理か否かでは正反対の結論となったが、極めて微妙という外ない。業務内容や人材育成・配置の違いを重視するか、それとも実態上の長期雇用とそれによる会社への貢献を重視するか、裁判官の紙一重の判断の違いといえる。契約労働者とは称しても、長期間更新を積み重ねていたり、近年導入された無期転換ルールが適用された労働者の場合、一切退職金を支給しないことが認められるかは、個別判断に依ることとなろう。

 現在では、「同一労働同一賃金」の原則が実定法上の法規範として確立している。裁判手続上においても、参考とすべき基準となろう。ただ、退職手当に関しては、原則的考え方を示さず企業の個別事情に応じて体系を整えるよう求めている。合理性、納得性をもって制度化できるかが境界線といえる。

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令和2年10月26日第3278号2面 掲載

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