【主張】AIで国民巻込む議論を

2019.07.04 【主張】
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 厚生労働省の労働政策審議会労働政策基本部会(守島基博部会長)は、日本のAI化(IoT、ビッグデータ、ロボット活用など含む)による技術革新が労働面に及ぼす影響や解決すべき課題について報告書をまとめた(素案は本紙7月1日号1面既報)。

 AI化の問題について、2年程度議論してきたものの、危機意識が伝わらない内容となっている。とくに、解決すべき課題において労働者のプライバシー保護や労使コミュニケーション強化も重要だが、AI化を加速させるために労働面からいかなる支援ができるかという差し迫った視点がほとんど欠けている。

 日本のAI化は、いうまでもなく欧米や中国に大幅な遅れをとっている。経済低迷が長期間続いた日本が、この遅れを取り戻すのは容易ではないが、その次の技術革新を見据えた投資と人材力の大幅な強化が不可欠となっている。社会全体としての人材の適正配置に向けた労働移動の促進と将来のニーズに合った能力開発を進めるための具体的な方策を提案すべきだった。

 報告書では、AI化のために「円滑な労働移動の促進を図っていくことが求められる」としているが、具体性がない。日本の技術立国としての立場が失われ掛けている現在、労働問題専門の審議会として、労働移動の促進に寄与する制度改正のあり方などについて深く追究すべき時期に来ている。AI化に伴う産業構造の変化を社会全体として受け止めて、日本経済の成長力に結び付けることができなければ、将来的にも貧困化の流れから脱却することはできない。

 たとえば、大きな課題として日本特有の解雇規制がある。結果として規制緩和するか否かは別として、労働移動の促進に向けてどのような見直しが可能かについて勇気をもって議論すべきである。これまで、こうした問題の洗い出しに正面から取り組んできたとはいい難い。

 長期雇用慣行の利点を残しながらも、一方で円滑な労働移動を促進するのは難しい課題だが、飛躍的なAI化が迫られる今こそ国民を巻き込んだ議論を始めてほしい。

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令和元年7月8日第3216号2面 掲載

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