【主張】避けたい安易な「欧米化」

2016.09.12 【社説】
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 厚生労働省が発表した「働き方の未来2035」と題する懇談会報告書は、日本型雇用システムや企業共同体意識の変容を迫った提言である。通信手段の発達や処理速度の飛躍的向上、人工知能を中心とする技術革新によって、多くの労働者が同じ部屋に同時に集まって一緒に仕事をしなければ経営が成り立たない時代が過ぎ去ろうとしているという。

 企業と労働者は、「空間」と「時間」の束縛から解放されると同時に、賃金支払い基準だった「労働時間」の概念も希薄化する。一方、「成果」による評価が一段と重要になり、長時間労働も抑制されていくなどとした。

 将来の労働の姿を描いたものだが、今後20年程度で果たしてこれほど環境が激変するかは疑問である。いまから20年前のことを想起すれば明らかである。たとえば、社会への影響があれほど強かったIT革命は、やはり通信手段や情報収集力の格段の向上をもたらしたが、労働に本質的変化をもたらさなかった。判例法理や労働法制にも根本的変化はなく、労働者保護の仕組みは依然健在だ。

 しかし、さらに先の将来を見据えた場合、日本が世界標準の労働システムに限りなく接近しなければならない時期が到来する可能性は否定できない。懇談会報告書は、その意味で参考となる指針と考えてよく、企業の管理的立場にある者は十分承知しておくべき内容である。日本型雇用システムが、経営上非効率とみなされ、収益が見込めなくなった段階で、日本企業は否応なしにそこから脱却していくことになるだろう。

 長期的展望に沿った人材育成と生活設計が望める現在の雇用システムは、高度経済成長スタート以来、日本企業が独自に築き上げてきたものであり、簡単に捨て去ることはできない。日本型雇用システムからの脱却は、その利点と欠点を天秤に掛けながら長期展望をもって進めていくべきであろう。

 日本は、世界標準とは異なった道を歩んで先進経済大国に成長した。これは誇るべきことであり、安易な欧米化は避けたい。

平成28年9月12日第3080号2面 掲載

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