【主張】労政審はスピード感必要

2017.05.29 【社説】

 官邸と労働政策審議会の新たな関係が実質的スタートを切った。本紙報道(4月24日号1面)によると、官邸主導で打ち出した「働き方改革」の大方針を、労政審が職場の現実に当てはめて具体化を図る「詰めの検討」に入った。過去に一部で指摘された労政審軽視論を乗り越え、適切な分業態勢が確立したと受け止めることができる。今後、働き方改革は、理想論と現実論が妥協し合うことによって好ましい方向へ歩みを進めることになろう。

 労政審軽視論あるいは無用論は、ここ10年ほど前から指摘されていた。経済財政諮問会議などが決定した改革方針を、再度労政審に投げて意見調整をする手続きに業を煮やした官邸筋などから聞こえてきたもの。労政審を単なる「利害調整の場」でしかないなどと批判する声が挙がったほどである。

 軽視論に危機感を持った労政審の公益委員からは、労働問題の具体的設計については「審議会の検討を経るべきである」などとする意見表明がたびたび行われた。あたかも官邸VS労政審という対立構図が形成、その後の動向が注目されてきた。

 本紙では、本欄などで労政審の存在意義は大きいとする主張を一貫して続けている。職場の現実や労働法体系を熟知した公労使三者の議論を経るのは必要不可欠と訴えてきた。どんなに立派な方針や改革でも、職場の実態や特有の労使感情を飛び越えて無理に当てはめようとしても、結果として有効に機能する可能性に乏しい。

 今回、塩崎厚生労働大臣は罰則付きの時間外上限規制という画期的改革に関し、「その詰めをしていただく…関係する諸課題に答えを出していただきたい」と話したという。法的・制度的な技術論は、専門家の集まる労政審にまかせ、働き方改革実行計画がうまく機能するよう「肉付け」をしてもらいたいという趣旨である。官邸主導による大方針とそれを実務的観点から補完する労政審の役割分担が結合した瞬間といえる。

 労政審は、スピード感を重視して官邸の問い掛けに応える必要がある。

掲載 : 労働新聞 平成29年5月29日第3114号2面

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