【主張】使用者の年休指定に期待

2017.10.23 【社説】

 厚生労働省は、平成29年版の過労死等防止対策白書をまとめた。過労死を招く重大な要因の一つとなっているのが年次有給休暇の取得率低迷である。12年以降50%を超えられず、欧米先進諸国と比較すると惨憺たる状況といえる。

 政労使の目標となっている32年までに70%達成を実現するには、一刻の猶予もない。次期通常国会で与野党協力して労働基準法改正案を成立させ、使用者による年休の時季指定義務化を早期にスタートさせなければならない。

 このほど作成された労基法改正案では、地味で一般報道ベースに乗らないが、専門的立場からは画期的といえる変更事項がある。使用者による年休の時季指定義務化である。現行制度では、年休は労働者に時季指定権があり、使用者はごく限られた時季変更権を有するのみである。

 労基法改正案によると、使用者は年休日数が10日以上の労働者に対して5日分を時季指定し付与しなければならないと定めている。ただし、時季指定に当たっては、労働者から意見聴取するとともに、その意思を尊重するよう努めなければならない。

 使用者による年休時季指定の最大の狙いは、年間で1日も年休取得していない労働者が16%、また25%以下しか取得していない労働者が13%に達していることから、この層へのテコ入れである。年休取得ができていない労働者は、週60時間以上の長時間労働となっているケースが多いとの見方もある。

 年休取得率は、近年48%前後で推移し、どうやっても上向く気配がない。政労使で掲げた目標である取得率70%達成の期限まで3年ほどに迫った。労基法改正により罰則を設定して、全企業一斉に引き上げる横並び方式が効果的である。

 厚労省の試算によると、同改正によって年休取得率は50%の半ばまで一気に上昇するとみている。計画的年休制度のさらなる活用促進と年休制度自体の意義や重要性に対する周知・広報の積極化によって政労使の目標達成は可能と見込んでいる。労基法改正案の早期成立がどれほど重要か明らかである。

掲載 : 労働新聞 平成29年10月23日第3133号2面

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