人材面から防ぐ医療崩壊/社会保険労務士 濱事務所 濱 利明

2018.04.22 【社労士プラザ】

社会保険労務士 濱事務所
所長 濱 利明 氏

 今、医療機関は3つの大きな危機に面している。1つは医療保険制度の財政問題。2つ目が競争問題。3つ目は人材問題。

 私は医療機関を専門に人事面で支援しているが、医療機関を取り巻く経営環境はここ10年間で大きく変わってきた。

 医療保険制度の問題は政治問題となる。2つ目の競争の危機とは、都市部過集中の問題。現在医療機関である診療所の数は2012年に10万軒を超えており、横ばいないしは増加傾向にある。

 そのうち首都圏には約3割が所在しており、とくに東京地区では現在でも大きく増えているような状況となっている。

 国の医療施策としては、入院型から在宅型へ方向転換をしており、外来診療も抑制方向にある。つまり、「医院は開業すれば儲かる」というような通説は通用しなくなってきている。他の業界と同様に差別化による競争力が求められる時代となってきた。

 3つ目の人材の問題。医療機関の労務管理は一般企業と比べて非常に難しい。

 医療業界の、とくに労務管理の特殊性は、端的にプレーヤーがマネージャーを兼任しているところである。通常の企業であれば「中間管理職」といった存在が経営者とスタッフとの間の緩衝材となる。

 ところが医療機関では、そういった緩衝材がなく、そのままダイレクトに経営者とスタッフとの対立関係が顕在化してしまう。また、小さな職場であることが多いことから、スタッフ同士のいじめ、パワハラ、派閥、集団抗議も少なくない。医師のみていないところで予約拒否(残業拒否)もまかりとおっている。

 一番きついのが看護師を中心に求人難の問題だ。専門職の人件費は首都圏においては大変高騰してきている。また、労働法の理解や労働条件についても経営者とスタッフの間の意識の違いが大きく、対立関係になりやすいという特色がある。

 こういった問題を解決するには3つのポイントがあると考えられる。

 1つ目は、医療機関の院長が就業規則をはじめ、労働契約・労働法の基本的な考え方を理解すること。2つ目は、業務を見える化、マニュアル化し、仕事を属人化させないこと。3つ目がコミュニケーションのトレーニングや院内ミーティングの実施だ。

 時間はかかるが、こういった地道な努力を積み重ねることで離職率は減り、人材の問題は安定してくる。

社会保険労務士 濱事務所 所長 濱 利明【千葉】

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掲載 : 労働新聞 平成30年4月23日第3158号10面

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