【主張】監督強化し真の改革狙え

2017.04.10 【社説】

 規制改革の論議で労働基準監督業務の民間開放が打ち出された。定期監督業務を社会保険労務士などに委託する案が浮上しているようだが、実現すればこれこそ労基行政始まって以来の大改革である。

 法令違反事件の大規模化、複雑化、悪質化が進行し、限られた予算と現行の監督態勢では十分にカバーできなくなっているのは確かである。どのような形式の民間開放がベストなのか、専門家による前向きな検討を望みたい。

 働き方改革が焦点となっているにもかかわらず、実は労働基準監督官による事業場監督態勢が手薄になっているのが実態だ。年間の監督実施状況をみると、最新の平成27年は16万9000件だったが、25年以前はほぼ17万件を超え、7年以前になると20万件を超える年もある。

 監督件数の減少と歩調を合わせて、事業場の送検件数も減少傾向がみられる。

 20年ごろまでは年間1200件台だったが、徐々に減少していき、27年には初めて1000件を割る966件に落ち込んでしまった。十分な捜査が行えないためか、起訴率も以前の50%台から近年40%前後に落ちている。全国の監督官数は、25年度の3198人から28年度には3241人となった。増加したとはいえ、この間の3年間で実質50人足らずである。監督対象となる事業場数は約430万社、労働者数は約5200万人に上っている。

 厚生労働省では、長時間労働の特別捜査を担当する過重労働撲滅特別対策班を設置して大企業の雇用者責任を重点的に追及するなど注目を浴びているが、全体としては監督態勢が手薄になってきているといわざるを得ない。

 打開策の一手段として浮上したのが、民間開放である。今後、急ピッチで監督官増員を図らなければならないが、他方で一部の監督業務を民間委託するのも選択肢であろう。現在示されている案では社労士などに定期監督業務を委託し、重大違反につながる申告監督を正規の監督官が担当するというもの。

 真の働き方改革を推し進めるための議論の一環と位置付けたい。

掲載 : 労働新聞 平成29年4月10日第3108号2面

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