【主張】想定外の副業・兼業拡大

2019.05.16 【社説】
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 政府は、働き方改革の一環として「副業・兼業」の促進を提唱しているが、的確な労働時間管理の方法を見出せない状況となっている(本紙5月6日号1面既報)。労働者の自己申告に任せると正確な把握が難しく、企業間の情報交換を前提とすると私的領域への過度な介入となりかねない。副業・兼業を本格的に拡大するなら労働基準法の見直しを検討する必要がある。

 副業・兼業の労働時間管理については、労基法第38条で、「事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とし、これを受けた局長通達で「『事業場を異にする場合』とは事業主を異にする場合をも含む」と解釈している。使用者は、同規定により副業・兼業を認めた労働者の労働時間数全体を把握した上で、必要な対策を講じなければならない。

 しかし、現実には事業場間の労働時間を正確に把握する方法が見出せないのが実情である。労働者がフレックスタイム制や変形労働時間制で働いていたり、2カ所を超える多数の事業場で働いているケースもあり得る。多数の事業主、事業場が絡んでくるとすれば、割増賃金を支払うべき残業時間を特定することさえ簡単ではない。

 現行の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、労働者に労働時間数や業務内容などを申請・届出させることを勧めている。仮にさらに発展させて自己申告を義務化したところで正確性が保証されるわけではない。そもそも裁判例では、就業時間以外の私的時間をどのように利用しようと、原則として労働者の自由とされており、自己申告の義務化と矛盾しかねない。

 考え方としては、副業・兼業に対する強行的な規制を避け、現行ガイドラインの大幅拡充にとどめるという選択肢がある。好ましい労務管理のあり方を提示できれば、それなりに有益であろう。

 一方、労働時間管理や割増賃金の支払いをより厳格に行うなら、労基法自体の見直しを検討しなければならない。労基法が、現在のような副業・兼業の拡大を想定しているとは思えないからである。

令和元年5月20日第3209号2面 掲載

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