【主張】厳しい管理監督者の判定
横浜地裁は、日産自動車㈱の課長職相当として勤務していたマーケティングマネージャーを、労働基準法第41条2号の「管理監督者」と認めず、時間外労働に対する割増賃金約360万円などを支払うよう同社に命じた(本紙4月22日号4面既報)。職務と責任が「経営者と一体的な立場」にはないと評価した点が決め手だが、近年の学説・裁判例では、この基準を緩和する流れがあり、もう少し慎重な検討を求めたい。
同マネージャーは、新規プロジェクトの投資と収益の見通しなどを決定する会議資料などを実質的に作成、提案する立場にあった。同会議には複数の役員が出席し、プレゼンテーションを行う上司である部長職を補佐する役目を担っていた。年収は1000万円を超え、労働時間に対する裁量性もあった。
判決では、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限はなかったとして、「管理監督者」には該当しないと判断している。
しかし、同会議は役員9人が出席し、CEO(最高経営責任者)が決定権を有する極めて重要な会議と位置付けられている。同マネージャーは、各部署から情報を収集した上で新規プロジェクトの収支見通しを明らかにしていた。同マネージャーの職務と責任が「経営者と一体的な立場」にあるか否かの判断は極めて微妙といえよう。
この点の判断に関して、次のような指摘がある。「担当する組織部分について経営者の分身として経営者に代わって管理を行う」(菅野和夫著『労働法』第11版)ことも「経営者と一体的な立場」にあると認定可能という。近年の裁判例には、企業経営全体の運営への関与を要すると誤解しているケースがある。
さらに、「最近ではこの基準を緩和し、職務内容がある部門の統括的なものであり、労務管理上の決定等について相当の裁量権を有していることと解釈する例も少なくない」(土田道夫著『労働契約法』第2版)。
経営者との一体性判断については、緩和の流れを考慮し再検討すべきである。