【主張】残業時間指導が新段階に

2016.06.20 【社説】

 厚生労働省は、今年度から長時間労働是正のための監督指導対象を「月80時間超の残業」が疑われる事業場へと拡大した。長時間労働是正を対象とする監督事業場数は、これまでの倍以上となる年間約2万事業場に達する見込みである。

 しかし、この監督方針の変更は、もっと早く表明すべきだった。月80時間超の残業が過労死発症の可能性を高めることは、すでに約15年も前に分かっていたからだ。今後は、全国の監督指導体制をしっかり整えて実効性を確保し、この大幅な遅れを取り戻す努力を惜しまないでもらいたい。

 企業側としては、長時間労働是正に向けた政府の取組みに一層拍車が掛かったと認識すべきである。これを機に、世界的にも恥ずかしい過労死の撲滅に自ら力を尽くし、そして成熟した先進国への扉を開いていきたい。

 約15年前に打ち出された脳・心疾患認定基準によると、発症との関連性が強い過重負荷とされる残業時間数は、発症前1カ月間でおおむね月100時間超または発症前2カ月間ないし6カ月間でおおむね月80時間超とされている。

 従来、各種情報提供などに基づき月100時間超の残業が疑われる事業場を把握して重点的な監督指導を展開してきたが、これでは明らかに不十分である。本気で過労死撲滅をめざすなら、認定基準が示す通り月80時間超の残業に対しても同様の姿勢で臨むべきだった。

 実際には、労働基準監督署において、月80時間超の残業が可能な時間外労働協定を届け出た事業場に対し自主点検実施などを要請していたほか、過労死などの労災請求がなされた事業場に対しては月80時間以下に削減するための指導を行ってきた。結果として過労死や精神障害の発生を十分に抑え切れていないといえるだろう。

 今回は並行して、労働基準監督官の増員拡大とともに、重大・悪質な労働時間違反事件に対する捜査態勢の充実を図っている。また、都道府県労働局に洩れなく担当の監督官を新たに配置しており、効果を期待したい。

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掲載 : 労働新聞 平成28年6月20日第3069号2面

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