【主張】由々しき雇止め紛争増加

2018.07.19 【社説】

 今年4月から実質的に適用が始まった「無期転換ルール」(労働契約法第18条)に関連し、懸念していたことが現実となっている。厚生労働省が集計した平成29年度の個別労働紛争解決制度の運用状況によると、無期転換ルールの適用回避を狙った有期契約労働者の「雇止め」に関する労使紛争が多発傾向にある実態が明らかになった。

 無期転換ルールは、雇用が5年を超えて反復継続した場合に労働者の申出に基づき無期契約へ転換する制度で、有期契約労働者の雇用安定を強化するのが最大の目的である。無期転換ルールの適用を契機とした雇止めが多発し、逆に有期契約労働者の雇用継続が切断、阻害されているとすれば由々しき事態である。

 無期転換ルールや雇止めは民事上解決すべき紛争で、最低労働条件を監視する労働基準監督署が深入りできないとはいえ、さらに雇止めが増加して社会問題化しないよう徹底した指導が求められる。無期転換ルールを回避する雇止めに対し、裁判所がいかなる判断を示すかも今後注目していきたい。

 個別労働紛争解決制度では、解雇や労働条件の引下げなどに関する紛争が減少しているものの、雇止めにかかわる紛争が増加に転じてしまった。都道府県労働局長による助言・指導を例にとると、雇止め関連は前年度比29%も増加し、728件に達している。このうち、無期転換ルールの適用回避を狙った雇止めと明確に判断された紛争が103件を占めた。3割は何らかの形で和解したが、7割は労働審判などに持ち込まれたという。

 労契法第19条には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときは、企業は従前の労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で雇用を承諾したものとみなす規定がある。無期転換ルールの回避が、社会通念上相当かどうかは裁判所による個別判断によるが、容認されない可能性が高い。

 適用回避のために雇止めを行った企業は、今後、不利な紛争処理に追われることを覚悟すべきである。

掲載 : 労働新聞 平成30年7月23日第3170号2面

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