【主張】労働者性範囲拡大は性急

2018.06.28 【主張】
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 厚生労働省が審議会に対し、「雇用類似」の働き方を保護するため、労働者性の拡大解釈などを検討してはどうかという提案を行った(本紙6月18日号1面既報)。仮に発注元との関係において経済的従属性が強いとしても、フリーランスと労働者とは異質である。無理やり労働者性の拡大解釈などをする必然性も必要性もない。労働法適用に大きな混乱を招く解釈変更には同意しかねる。

 本紙報道によると、「雇用類似」のフリーランス保護に向け、①労働者性の範囲を解釈により積極的に拡大、②労働基準法上の労働者概念を再定義(拡大)、③雇用類似の働き方の者に対し労働関係法令の保護を拡張する――などとした3つの方法を提案。保護の対象や内容について議論すべきであると要請した。

 労働者性の範囲を積極的に拡大したり、労働者概念を再定義する政策変更は、これまで築き上げられてきた労働法体系に大きな影響を及ぼすもので、仮に実施するにしても相当な時間を掛けて慎重に進めなければならない。一般に現在でも分かりにくい労働法とその適用において、さらに混乱を生じかねない。

 そもそも労働者とは、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者と定義されている。ケースによって労働者性判断が難しい場合があり、その際は、労務提供の形態、報酬の労務対償性などの諸要素を総合的に考慮している。総合的判断により実態上労働者と判断される事案も少なくなく、そうなれば労働者保護規定を適用して救済しているのが現状だ。

 いま問題となっているのは、「雇用類似」とはいえ、総合的にみても実態上労働者ではない純粋なフリーランスをどういう方法で保護するかである。本来的に労働行政の対象外だが、無理やり守備範囲に収めたいようだ。いくら経済的従属性が強いといっても事実上雇用契約関係にない個人事業主を労働者とみるのは拡張し過ぎで、労働法体系に影響が生じかねない。

 労働法の労働者保護規定を適用するのではなく、異なる性質のガイドラインなどで対処すべきである。

平成30年7月2日第3167号2面 掲載

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