【道しるべ】「異常」放置 同じ轍を踏まなければいいが

2013.10.15 【ひのみやぐら】
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 朝礼や会議・ミーティングの場などで、安全チェックや改善措置の実施確認について念押しした事業場が多かったに違いない。JR北海道の「異常」放置を引き合いに出してである。

 放置の実態は想像以上だった。レール幅の社内基準超過が定期検査で指摘されていたにもかかわらず、補修に着手しないまま放っておいた現場が267箇所にも上り、列車の脱線事故までひき起こしている。また、相当数の欠陥が発覚した直後、工務部門のトップは重大なミスと認めながらも「なぜ放置したのか……」と、保線現場の実情に疎(うと)く全く通じていなかったともとれる発言をしている。これらを、ずさんな管理体質の発現と言ってしまえばそれまでだが、同社では一昨年、特急列車が脱線炎上して多数の負傷者を出す大事故が発生し、その後も運転士による不祥事などが続いていたのだから、単なる管理のゆるみとかミスの重なりですまされるような事態ではない。どう弁明しようと、安全不在を露見させた職場風土は厳しい糾弾を免れまい。

 異常あるいは危険な状態の改善が手つかずのままだった直接的理由や背景要因は、調査が進むにしたがって明確になっていくだろうが、そこに列挙されるであろう具体的な事由、事象に関しては安全担当者ならずとも注視を怠らず、自職場と照らし合わせながらの留意材料として活かしていきたい。なぜなら、生産現場においても不安全状態の放置が少なからずあって、災害を惹起させている現実があるからである。

 不安全な状態を原因とする災害では、物の置き方・作業場所などの物的欠陥と、防護措置の欠陥(安全装置ナシもしくは不完全)が40%強を占め、作業方法の欠陥(約35%)を上回っている。(本誌姉妹誌「安全衛生ノート」9月号特集「不安全状態を放置しての災害」より)。その設備・機械・器工具類に関しては時間の経過とともに損傷・変形・腐食・老朽化することを念頭に置いて常に異常がないかを点検し、異常発見の際には迅速に是正処置を講じることが重要とされている。

 定期・随時の安全点検の実施、適切な事後措置の実行は至極当然なことなのだが、これを改めて強調せざるを得ないのはおざなりなチェックが依然としてあるためだろう。恐らくは作業への慣れとか生産優先からくる危険軽視、安全意識後退が因(もと)での安易な確認になっていると思われるが、事故災害が起きてしまってからでは遅い。

 人命に関わるほどの欠陥があると知りながらの放置は論外としても、無意識のうちにそれに似た対応をしていないかに注意を傾けたい。

平成25年10月15日第2196号 掲載

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