【道しるべ】危険感受性 高揚が主体的安全意識にも

2013.02.01 【社説】
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 前号での記述を継ぐかたちになるが、他人任せを排した自己安全意識について書き加えておきたい。小欄で1年前に取り上げた〝釜石の奇跡〟をテレビで再視聴したからである。

 東日本大震災の際、岩手・釜石市内では小中学校の児童・生徒が教師の指示を待つことなく次々と避難行動を開始し、大津波による犠牲者を1人も出さなかった。これが〝釜石の奇跡〟といわれているもので、群馬大学大学院の片田敏孝教授による「生命を守る授業(率先避難の教え)」で子供たちが習っていた防災のための知恵と知識、取るべき行動とその実践訓練が劇的に役立った災難回避の例だった。

 番組中、片田教授は当時を振り返りつつ、次のような警告を発していた。「日本社会は、自分の命を守ることに対して完全な受け身社会になってしまっている」、「情報がなかったから逃げられなかった、人に逃げろと言ってもれえなかったから逃げられなかった、とよく聞くが、そのへんに問題はないか」――。そう訴えたうえで「自分の命はしっかり自分で守るのだ、ということを心の底から分かっていた子供たち」から学ぶべきこととして、命を守ることに対して「主体的である、積極的である、他人任せにしない」ことの重要性を再三強調している。

 また、イザというときに備えての学校教育においては、教師によって自然災害のもたらす現象とか怖さが通常の教科目にも分かりやすく織り込まれ、身近に起こりうる危険への感性を子供たちが常に持ちつづけるような工夫も施されている。例えば津波到達時間の計算を算数で教えるとか、社会科で自分たちの住む地域を回りながら防災マップを作らせるとか。この指導方法も範とすべき取組み例に挙げられている。

 この、児童・生徒への教育と行動実績は多方面から注目され、「率先避難」が地域や企業の防災活動において活用されるようになった。これをさらに職場安全管理に生かそうという動きもある。

 その場合だが、最初に手がけるべきは現場の人間の個々それぞれに「他人に依存しない主体的・積極的な安全意識」あるいは「危険への感受性」が心の底からのものとしてあるか否かの実情把握だろう。そこに「命を守ることに対して受け身」な現実が認められるなら、子供に教え込むような策を練らないわけにはいかない。

 〝奇跡〟に倣っての改めての危険感受性教育には、相手が大人だけにやりにくい面が多々あるにしても、危険を危険と見定める感受性が鈍ければ回避行動もおぼつかない。安全を他人任せにする状態が、放置されたままつづく。

平成25年2月1日第2179号 掲載

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