【道しるべ】腰痛要因 心理面の影響も留意の対象に

2013.07.15 【社説】

 腰痛持ちである。20年以上も前になるが、愚息の少年野球につきあって底冷えのするグランドに終日立ちっぱなしでいたのがいけなかった。翌日出社してから立つも歩くもできなくなり、這うようにして整形外科医に向かった。以来、腰痛との腐れ縁が続いている。今のところは通院・服薬の要もなく、兆候があってもゴムベルトで絞めつければ治まるのだから慢性ながら患者と自称するほどでもない。怖いのは、用心を忘れた動作での突然の再発だけである。

 個人的体験からいうと、腰にわずかな疼痛があっても鬱陶しいものだし、症状が高じると身動きもままならなくなる。そうした腰痛苦にさいなまれている人というのはどれほどに上るのか。私生活での発症は数限りないとして、仕事がらみでの罹患を厚生労働省の調査(2011年)で見ると、休業4日以上を要する腰痛の発生は4822件。職業性疾病の実に6割を占めている。年次を遡ってもこの比率に大きな変化がない。近年に顕著な状況としては社会福祉施設、医療機関での患者数の急激な増加が挙げられている。

 このため厚労省では「職場における腰痛予防対策指針」を19年ぶりに改訂し、適用範囲を福祉・医療分野などにおける介護・看護作業全般にまで広げるとともに、リスクアセスメント手法を活用した発症要因削減への自主的取組みを促している。

 ざっと目を通したところ、指針に明記されている作業・作業環境・健康の3管理と労働衛生教育に関する実施事項は詳細かつ具体的でチェックリストも添えられているから、確実な実行がもたらす予防効果は期待していいと思われる。ただ、そのなかで動作要因・環境要因・個人的要因と並んで注目されるとある「職場の対人ストレスなどに代表される心理的・社会的要因」への言及には、いささか物足りなさを感じざるを得ない。

 本誌が99年8月に腰痛関連の特集記事を組んだとき、高知医科大学の甲田茂樹助教授(当時)は発症に影響を与える心理的要因に触れ、「最近の特徴として仕事上のストレス、焦り、イライラなどが腰痛症の訴え率を上昇させている」と指摘されていた。ものの本によると心因性の腰痛は心の葛藤が原因で起こり、検査しても体の異常は見当たらず、複雑な人間関係などが誘因となって発症することがあるのだとか。これが職種を問わず増える可能性があるのだとすれば、どの職場であれメンタルな面も視野に入れた措置を講じなくてはならないことになる。症例への認識が浅い現況からすると、次なる検討課題か。

掲載 : 安全スタッフ 平成25年7月15日第2190号

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