【人材ビジネス交差点】ギャップを減らす採用戦略/三浦 妙子

2025.05.04 【人材ビジネス交差点】
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ICVコンサルティング㈱ 取締役常務執行役員 HR事業本部長
三浦 妙子 氏

 新卒採用において、多くの企業が「入社後のミスマッチ」に直面している。応募者の確保を優先するあまり、職場環境や業務の実態を十分に伝えられず、学生は「入社しないと分からない」といった不安を抱えている。その結果、「自分に合わなければ転職すれば良い」と考える学生が増え、退職代行サービスの利用も増加傾向にある。とくに、入社直後や長期休暇明けに離職するケースが増加している。採用時の情報不足が一因とされており、採用企業は本音を伝えることが重要である。

 ミスマッチを防ぐには、職場の“リアル”を正直に伝えることが不可欠である。筆者が学生の就職相談に乗るなかで実感したのは、「リアルな情報を提供する企業に好感を抱く」傾向が強いことだ。職場の透明性が高まることで企業への信頼が生まれ、入社後の定着率の向上にもつながる。

 “リアル”を伝える具体的な工夫として、次の2つを紹介したい。

 1つ目が、現場社員との座談会だ。社員が仕事の魅力だけでなく、大変さも率直に伝える座談会を実施することで、学生の理解が深まっていく。たとえば人材業界では、派遣社員の急な退職への対応が求められるといった厳しさがある一方、マッチングが成功し、感謝される喜びは大きい。

 こうしたリアルな体験談を学生と共有することによって、入社後のギャップを大幅に減らすことが可能になる。

 2つ目が、インターンシップによる実体験。OJT型インターンシップを導入し、実際の業務を体験させることで、学生は仕事内容を具体的に理解できる。ある企業では、25日間のインターンシップ実施後にエントリーを行う仕組みを採り入れ、内定辞退率が低下した。結果的に入社後の定着率も向上している。

 企業が、自社の課題や職場環境を正直に伝えることは、新卒入社者との信頼の構築につながる。たとえば、動画を活用し、社員の日常業務の内容や1日の流れを紹介すれば、職場の雰囲気をリアルに伝えられるようになる。

 さらに、「長期的なキャリア形成の可能性」を示すことも重要である。社員の成長機会やキャリアパスを明確にすることで、学生は「長く働ける職場である」という安心感を持つことができる。

 採用活動においてリアルな情報を発信していくことは、短期的な採用成功に留まらず、企業の長期的な成長を支える重要な戦略となる。職場の透明性を高めれば、入社後のミスマッチや早期離職のリスクも抑えられることから、今後は「リアルな情報提供」と「長期的な価値提示」の両立によって、信頼される採用活動をめざす姿勢が企業に求められる。

筆者:ICVコンサルティング㈱ 取締役常務執行役員 HR事業本部長 三浦 妙子【東京】

【公式WEBサイトはこちら】
https://www.icv-consulting.co.jp

令和7年5月12日第3496号10面 掲載
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