【主張】効果実証した雇調金緩和

2021.01.21 【主張】
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 厚生労働省の雇用政策研究会(樋口美雄座長)がまとめたコロナ禍の雇用政策に対する検証結果によると、雇用調整助成金を受給しやすくする素早い対応が、コロナ・ショックを大幅に和らげたことが明らかになった。休業者は一時的に大幅増となったものの、リーマン・ショック時ほどの失業水準には達しておらず、有効な緩和剤となった。官邸主導による緊急対応に支持を表明したい。

 検証結果によると、雇用者全体の休業者は、緊急事態宣言の2020年4月に、対前年同月比369万人増と急拡大した。しかしその後、休業者の増加数は縮小し続け、同年10月時点で、同15万人の増加に留まった。厚労省では「平常時に近い状態まで戻っている」としている。

 完全失業者は、同年4月と10月との比較で36万人増加したが、リーマン・ショック(08年9月)から6カ月間で57万人増加したのと比べるとダメージは小さい。リーマン・ショック時の完全失業者のピークは10カ月後の100万人増加であった。

 同年4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は、実質で年率28.11%減少となり、リーマン・ショック時の同17.8%減少を大幅に上回る戦後最悪の落ち込みであったが、雇用情勢に限れば比較的緩やかな後退に留まったのは明瞭といえる。

 一方、雇調金の利用状況をみると、同年4月から12月23日までの累計で約220万件の申請があり、支給決定額で2兆5000億円弱に達している。緊急事態宣言直後から支給要件や手続きの断続的緩和、助成率・支給上限の引上げなどの特例措置を機敏に実行に移してきた。当然、休業者の急拡大につながったものの、リーマン・ショック時ほど失業を出さずに済んだ。

 通常国会に提出する20年度第3次補正予算案では、在籍出向により雇用を維持しようとする企業向けに産業雇用安定助成金(仮称)を新設する予定となっている。新型コロナの感染状況は今後も予断を許すことはできない。財政均衡主義から脱却し、引き続き柔軟で大規模な企業・雇用支援を実行してもらいたい。

令和3年1月25日第3290号2面 掲載

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