【ひのみやぐら】高齢者・女性に向け改善を
今年も10月1~7日を全国労働衛生週間とし、前月の9月1~30日が準備期間として設定されている。実施要綱を見ると、高年齢労働者の一般健康診断の有所見率の上昇、働く女性の健康問題、治療と仕事との両立支援、メンタルヘルス対策の推進、化学物質による健康障害防止など、近年の産業界で抱える衛生管理面での課題を挙げて、そのうえで重点事項を示した。
少子化などによる労働力不足を背景に高齢者や女性の活躍が期待されているところだが、就業者の増加に伴い安全で健康に働ける職場環境づくりの必要性が強く求められるようになってきた。女性の進出は社会福祉施設や小売業でめざましいが、製造現場でも戦力として頼りにされている。こうした業種では、「動作の反動、無理な動作」を原因とする腰痛や身体機能低下による転倒が懸念されているところだ。
筋力や認知機能が低下する「フレイル」、骨や関節、筋肉などの運動機能障害によりバランス能力などが衰える「ロコモティブシンドローム」のリスクが加齢とともに高くなる。さらに女性の場合は、骨密度の低下から骨折する危険性が増していく。
実施要綱では、「エイジフレンドリーガイドラインを踏まえ施設、設備、装置などの改善」「体力低下などの特性を考慮した作業内容の見直し」「腰痛予防に関する労働衛生教育の実施」などを転倒・腰痛防止対策に掲げている。また、女性の健康課題の理解促進へ教育や相談体制の整備などを求めた。
今号特集Ⅰでは、高齢者、女性が働きやすい職場づくりへ設備改善を行った事例を紹介している。無人搬送車の導入により、重筋作業レスを実現したダイキン工業堺製作所や車椅子の電動アシスト技術を台車運搬に応用した機器を開発し、女性従業員の運搬作業を改善したヤマハ発動機などの好事例は大いに参考になる。
多くの事業場で、高齢者や女性の労働災害防止と健康管理が課題となっている。全国労働衛生週間の本週間、準備期間では、まずは職場の問題点を洗い出し、取組みを進める絶好の機会としたい。